Rauber Kopsch Band2. 033   

 代生歯Ersatzzähneは図47にすでに示したように,歯堤に生ずる小さい歯胚をもとにして出発する.これができるのはやはり歯堤の唇面であるが,乳歯の原基よりは舌側(内方)である(図48).大臼歯とその他の代生歯との差異の1つは,前者は歯堤に生ずる第1列の歯に乳歯といっしょに属しており,永久歯の切歯と犬歯と小臼歯は第2列の歯であるということである.

[図50]新生児の上顎の歯槽と歯小片Zahnscherbchen.

[図51]新生児の下顎における歯小嚢 ×1 代生歯の原基は黄色くしてある.

下顎の右半を内方からみる.5個の乳歯と永久歯の第1大臼歯の歯小嚢を剖出してある.その他に前方の4個の代生歯の歯小嚢と永久歯の第2大臼歯の歯小嚢の原基とがみえる.1. 最後の乳歯;2. 永久歯の第1大臼歯;3. 永久歯の第2大臼歯の歯小嚢の原基.

g)乳歯の萠出Durchbruch der Milchzähne

 出産のときに前方の乳歯は歯冠がすでにでき上つており,両顎内で歯小嚢のなかに包まれて,歯根の形成がはじまっている.

 左右各半の歯列はそれぞれの顎半分がもつ5つの歯槽のなかにある.そのほかになお永久歯の第1大臼歯のための第6番目の歯槽があるが,これはしかしまだ独立していないで,乳歯の第2大臼歯の歯槽とつづいている.なおまた永久歯の内外の両切歯と犬歯と第1小臼歯の歯小嚢を入れるための4つのくぼみがある(図50, 51).

乳歯が歯肉を貫いて外にあらわれるのは規則正しい順序でおこる.しかし対をなす各々の歯があらわれ出る時期はある程度,個体的に違っている.乳歯の萠出は生後およそ第7月にはじまって,第2年の終りまでに多くは完了する(図52, 57).

乳歯がでてくる前に歯肉は若干の特異な変化をする.まず歯肉の自由縁が密になり鋭くなる.ついでその鋭い角がなくなって歯肉の縁が円くなり膨れてくる.そして青みがかった赤い色を呈する.それから歯の尖端が白い点あるいは白い線として血管に富む歯肉を通してみえてくる.ついで間もなく歯が萠出するのである.歯冠がだんだんと露出してゆくあいだに,すでに長くなった歯根が骨性の壁をそのまわりに生じて,歯槽のなかに閉じこめられる.萠出のおこる前に粘膜のなかにはかなり多数の小さくて白いものがみられる.これは歯堤の残りであって,酒石腺Glandulae tertaricae s. dentales,上皮真珠Epithelperlenとよばれる.これは上皮細胞の塊りであって,それが角化して固くなったものである(図48).

[図52]乳歯の萠出を示す模型図  (H. Welckerによる)図の右側には萠出の平均月数(生後の月数),左側には萠出の順序が示されている.

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最終更新日13/02/03

 

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