Rauber Kopsch Band2. 036   

歯の埋伏Retentionはとくに上顎の犬歯で比較的多くみられる.歯数の増加もやはりまれなことである.いっそう多いのは見掛けの増加scheinbare Vermehrungであって,これは乳歯の1つが脱落しないで残っていて,代生歯がその近くで萠出しているのである.第3切歯がみられることはごくまれであり,第4大臼歯も珍しいものである.第4大臼歯は広鼻Platptrhinの猿類には正常であるが,狭鼻katarhinの猿類は人と同じ歯式をもつのである.いろいろな型の顎骨裂Kieferspalteのばあいに時として歯数が変化をうけている.そのときに歯数がふつうより増していることさえある.まれなことであるが,老人に代生歯の形成がなお1度いろいろな程度におこることがある(老人性生歯Dentitio senilis).

k)歯の脈管と神経Gefäße und Nerven der Zähne

 歯の脈管と神経は一部は歯髄とゾウゲ質のなかに,一部は歯根膜のなかにある.これらは近くのいっそう太い1血管や神経の幹からきている.

 上顎の歯にくる血管は顎動脈の枝である後上歯槽動脈と眼窩下動脈の枝の前上歯槽動脈である.これらの血管は上顎骨の壁にある細い管のなかを通り,たがいに吻合して,他にも枝をだすが,歯根膜と歯肉と歯髄にゆく血管をだしている.歯髄への血管は歯髄の神経とともに歯根尖孔を通って歯髄に入り,ここで豊富な血管網をなしている.歯根膜の血管は付近の骨部血管とつながっている.下顎の歯への血管はみな下歯槽動脈からきている.

[図57] 永久歯の萠出を示す模型図 (Welckerによる)図の右側には萠出のおこる平均年令が示され,左側では1から8までの数字が萠出の順序を示す.

 リンパ管には外方のものと内方のものとがある.上顎の歯からの外方のリンパ管は多数(8~9本)の小幹をなして顔面静脈に沿ってすすみ,顎下リンパ節の中央のものに入るが,大臼歯からのリンパ管は同じリンパ節の後方のものに入る.内方のリンパ管は上深頚リンパ節にいたる.下顎の歯からの外方の流れは顎下リンパ節の中央のものに達し,切歯からのリンパ管はその他に顎下リンパ節の前方のもの,あるいは(まれに)オトガイ下リンパ節にいたる.下顎のすべての歯からでる内方の流れは上深頚リンパ節にゆくが,切歯からはさらに顎下リンパ節の前方のものにも達している.

 上顎の歯の神経は後・中・前の上歯槽枝であり,いずれも眼窩下神経から分れる.これらの神経は上顎骨の骨壁のなかをすすみ,吻合して上歯神経叢Plexus dentalis maxillarisをつくり,この神経叢は前方で左右のものが吻合をなしている.この神経叢から歯にいたる上歯枝Rr. dentales maxillaresと歯肉に分布する上歯肉枝Rr. gingivales maxillares,その他の枝がでている.下顎の歯の神経は下歯神経叢Plexus dentalis mandibularisからおこる下歯枝Rr. dentales mandibularesである.下歯神経叢は下顎管のなかで下歯槽動脈の上方にあって,下歯枝と下歯肉枝Rr. gingivales mandibularesを出している.

 歯髄とゾウゲ質のなかでの神経の詳細については26頁を参照のこと.歯根膜は有髄および無髄の神経線維からなる密な網をもっている.その神経線維がかなり太い束をなして脈管とともに歯の長軸に沿って走り,またばらばらになった線維がもっと勝手な方向をとっている.無髄線維は多くは簡単な形の先端をもって主にセメント芽細胞の領域で終るが,その他の歯根膜の部分に終るものもある.

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最終更新日13/02/03

 

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