Rauber Kopsch Band2. 045   

線条部はごく短くて,時として導管の上皮のなかに縦のすじをもつ細胞Streifenzellenが島状の集りをしているのみである.線条部が全く欠けていることさえある.

 著明な構造はジアヌツチィ半月Gianuzzische Halbmondeあるいは縁細胞群Randeellenkomplexeとよばれるもので(図67)細かい顆粒をもって充たされた細胞の群であって,頭布あるいは指サックの形をして終末部の盲端のところをつくっている.その核は細胞の中心部にある.相となる細胞のあいだに細胞間分泌細管がある.

 舌下腺にあるこれらの細胞はK. W. Zimmermannによるとそのなかの顆粒が粘液顆粒と同じ染色性を示すが,決して典型的な粘液細胞ではなく,また決して漿液性の細胞でもない.これはおそらく主に水を分泌するもので,この水が粘液部の管のなかにある濃い粘液塊を洗い流すのであろうという.

c)顎下腺 終末部には耳下腺に同じなところと舌下腺に同じところとがある.顎下腺の漿液性の部分は胞状であり,粘液性の部分はいわゆる胞状管状で,ここでは長短いろいろの管の壁に多数の腺胞Alveolenがある.腺胞の盲端にはジアヌツチィ半月(図66)があって,この半月をなす細胞が顎下腺では蛋白顆粒をもっている.

低い円柱状の細胞で被われている峡部は短くて多くは枝分れをしないか,あるいは長くて多くの枝分れをしている.線条部ははなはだ長くて豊富に枝分れする.顎下腺管は耳下腺の導管と似た構造である(図68).

 唾液腺の動脈はその経過と分枝がだいたいに導管に伴なっていて,その終りのところは密な毛細管網をなして腺の終末部をつつんでいる.静脈の比較的太いものは動脈に接して通っている.動静脈吻合および上皮様細胞の集まった壁をもつ動脈がSpannerによって(Morph. Jahrb. 87. Bd.,1942)唾液腺の実質内にも,またその導管の系統にもみられている(図71).

[図71]上皮様細胞の集まった壁epztheloide Wanaをもつ動脈 上下の耳下腺より.(Spannerによる)

 唾液腺におけるリンパ管の詳細については確実な報告がまだなされていない.

 神経線維は一部は有髄,一部は無髄である.その経過の途中に所々に神経細胞の集りがみられる.終末部と終末部のあいだのところに帯状の索からできている交感神経の密な基礎叢Grundplexusがあって,これは基礎膜のすぐ外にあり,その索はごく細い神経原線維が玩いに網状に結合したものからできている.そしてこの基礎叢から極めて細い,そして瘤状の結節をもつ原線維feinste variköse Fibrillenがおこって個々の腺細胞のなかにはいっている(Boeke 1934).その関係は涙腺について図示するのと同じである.

唾腋Saliva, Speichel

 唾液ははなはだ水分に富む分泌物である.アルカリ性の透明な液で,正常の有形成分としては口腔粘膜から剥げてとれた上皮細胞のほかに唾液小体Speichelkörperchenをもっている.これは粘膜に由来し,この膜を抜けでたところの白血球とリンパ球であって,すでに死滅して多くはいくらか膨れあがっている.水および若干の塩類のほかにサリヴインSalivinあるいはプチァリンPtyalinとよばれる1種の酵素と少量のロダンカリウムRhodankaliumをふくんでいる.乾固物質は0.5~1.0%にすぎず,比重は1006~1008である.

5. 舌Lingua, Zunge(図61, 69, 70, 7278, 80, 82, 84, 86)

 舌は横紋筋を主成分とし,表面は口腔粘膜で包まれて,豊富な血管と神経をもつ器官であり,やや長めで幅の広い形をして,口腔をほぼ充たしており,その底から上方に向かって突出している.前方はト顎と,後上方は頭蓋底と,後下方は舌骨とつながっている.

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最終更新日13/02/03

 

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