Rauber Kopsch Band2. 046   

後方のいっそう幅の広い部分すなわち舌根Radix linguae, Zungenwurzelをもって咽頭および喉頭と境している.また前端はP]みを呈して舌尖Apexとよばれ,歯列弓の中部まで伸びている.舌の根もとと舌尖との間が舌体Corpus linguae, ZungenSpitzeである.上面すなわち口蓋に向かっている面は舌背Corpus linguae, Zungenkörperとよばれ,その反対の面は下面Facles mylohyoidea linguaeと称される.舌縁Margo lateralis linguaeは歯列に密接している.

 舌はその筋肉のはたらきによって食物を摂りこみ,それを小さい塊りにして食道の方へ送ることにあずかり,また言語というものの成り立ちや,言葉を発する活動じしんにあずかっている.舌の粘膜ははなはだ敏感であり,同時に味覚のおこる主な場所である.機能系としてみた舌についてはA. Dabelow, Verh. anat. Ges.,1950を参照されたい.

a)舌の粘膜Tunica mucosa linguae(図69)

 舌背の粘膜には前方のいっそう大きい部分と後方の比較的小さい部分とが区別できて,前者は硬口蓋と軟口蓋に,後者は咽頭に向かっている.

 これを前舌Vorderzungeと後舌Hinterzungeということができるが,その境を示すものは正中線上にある深浅不定のへこみ,すなわち舌盲孔Foramen caecum linguaeである.この孔につづく短い管を舌管Ductus lingualisといい,若干数の舌腺の導管がこれに開いている.前後両舌部の境としてさらに舌盲孔から左右おのおの1本の溝が前外側に走っていて,舌の分界溝Sulcus terminalis linguaeとよばれる.また浅い中心線上の溝である舌正中溝Sulcus medianus linguaeが前舌を表面的に左右対称の両半に分けており,この溝は時として後舌でもごく明瞭にみられる.舌正中溝は舌体の内部を貫いて正中線にある固い結合組織性の隔壁すなわち舌中隔Septum linguae(図77)のために外面に生じたへこみである.もっともこの結合組織性の中隔は舌背まで完全に達しているわけではない.後舌から喉頭蓋Kehldeckelに向かってかなりよく発達した3つのひだが走っている.正中線上に1つあるのが最も著しくて正中舌喉頭蓋ヒダPlica glossoepiglottica medianaとよばれ,外側に左右1つずつあるのが外側舌喉頭蓋ヒダPlicae glossoepiglotticae lateralesである.正中と外側のひだによって境されて左右1つずつのへこみがあり,これを喉頭蓋谷Vallecula epiglotticaという.

 舌の下面で口腔底から離れているところは粘膜が薄くて軟くできていて,ここに正中面上のひだが1つある.これを舌小帯Frenulum linguae, Zungenbändchen(図78)といい,これが下顎骨の内面を被う粘膜との間に張られている.舌小帯の外側にぎざぎざしたひだ,すなわち采状ヒダPlica fimbriataがある(図78).これは動物の種類によって(たとえば擬猴類Halbaffenで)よく発達している下舌Unterzungeの遺物である.それに対して上方にある大きい舌体は上舌Oberzungeに当るのである.

 なお舌の粘膜は多数の,かつ多様の乳頭Papillenならびに腺を有することが著しい.

α)舌乳頭Papillae lmguales, Zungenpapillen (図69, 70, 74)

 現在では舌乳頭につぎの4種が区別されている

1. 糸状乳頭Papillae filiformes(図69, 70).これは最も小さいが,数の最も多い舌乳頭である.前舌の背面の全体にひろがっていて,そのために舌背の表がピロード様の観を呈する.

 指のような形をした細長い高まりで,その中軸をなして結合組織性の基礎すなわち結合組織性の乳頭がある.この結合組織性の乳頭の尖端がしばしばいくつかの結合組織性2次乳頭に分れている.結合組織でできた基礎の上を重層扁平孜上皮が被っている.この上皮が2次乳頭のあいだの部分を充たすので,そのときは分岐しない単一の舌乳頭ができているが,結合組織性2次乳頭の丈げがはなはだ高いときは,しぼしば舌乳頭じしんがいくつかの2次乳頭に分れていて,これらが共通の1幹ずなわち乳頭の株Papillenstockからでている.

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最終更新日13/02/03

 

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