Rauber Kopsch Band2. 047   

2. 茸状乳頭Papillae fungiformes(図69, 70).キノコ状あるいは棍棒状の舌乳頭であって前舌部の背面に散在している.生体の舌ではその色が糸状乳頭より赤くて,幅がいっそう広いのでたやすく見わけられる.茸状乳頭は丈けのひくい多数の2次乳頭をもっている.

3. 有郭乳頭Papillae circumvallatae(図69, 70).ふつう7~12個あって,それがV字形に折れまがった1本の線をなしてならんでいる.そのV字のまがり角は舌盲孔のすぐ前のところにあり,開いた角は前方に向かっている.この乳頭の1つ1つは円錐の形で,その尖端が下方に深く舌のなかに沈んでいるので円錐の底は周囲の舌表面よりごくわずかしか高まっていない.おのおのの乳頭が輪形をした濠Grabenによって囲まれている.この濠を境する内外の両壁は重層扁平上皮で被われて,そのなかに何百という味蕾がある.また多数の漿液性の腺が濠の底に開いて,分泌物をそとに出している.有郭乳頭の内部は大部分が結合組織でできていて,この結合組織は乳頭の自由面(濠に向かっていない表面)では多数の低い結合組織性2次乳頭をなして高まっている.しかしこの2次乳頭は重層扁平上皮のなかに入りこんでいるだけで,上皮の表面がそのために高まることはほとんどない.それゆえ有郭乳頭の表面はだいたいに平滑である.時として2個あるいは3個の乳頭が1つの共通の濠によって囲まれている.

4. 葉状乳頭Paplllae foliatae(図69).左右の葉状乳頭は舌縁の後部でいわゆる葉状部Regio foliataにある.そこでは粘膜がいくつかのFoliaをなし,結合組織性2次乳頭がある.葉状乳頭は人では発達がよわく,多くの猿ではかなりよく発達し,家兎ではとくに明瞭である.そしてこれらの動物でははなはだ多くの味蕾をもっている.

 変異:有郭乳頭の側方と後方になお不完全な分離状態にある茸状乳頭とおもわれる櫛状の高まりのみられることがあって,変質乳頭Papillae degenerantesとよぼれる.また舌盲孔のなかから突出している単独の乳頭を孤立乳頭Papilla solitariaという.

 盲孔と舌管は胎生時に甲状腺(中部)の原基にまで達していた上皮性の細胞索(はじめはその中に腔所があった),すなわち甲状舌管Ductus thyreoglossusの残りである.時として盲孔や舌管のところに甲状腺の小胞がみられることはヒ述の点から理解できる.

 舌の粘膜は他の口腔粘膜と同じく重層扁平上皮で被われ,その下にはまず固有層がある.固有層は舌背に終る舌の腱線維の大部分をふくむので,舌の筋肉に対しては腱膜といえる関係にあるので舌腱膜Aponeurosis linguaeとよばれる.また舌筋の腱の一部は膠原性,一部は弾性の線維であって,それが多数に結合組織性乳頭のなかにまではいりこんでいる.糸状乳頭を被う厚い上皮細胞層が2次乳頭の上方で角化した長い糸状の突起をつくっていることがまれでない.その状態は動物の舌で角化した糸状乳頭がひじょうに強く発達していることを思い出させるのである.茸状乳頭の上皮層はそれにくらべるといっそう薄くて,また角化していない.有郭乳頭の滑かな側面,また同じく葉状乳頭の側面,まれには有郭乳頭および茸状乳頭の上面にも味覚の末梢性終末装置である味蕾Geschmacksknospenがある(感覚器の項を参照せよ).

β)舌腺Glandulae linguales, Zungendrüsen(図69, 72, 74, 75, 78)

 舌には上皮性の腺と脈管腺とが存在する.前者は前方,側方,後方のものが区別され,後者はいわゆる舌小胞腺Zungenbalgdrüsenである.

 前方の舌腺は各側1つの特別な小群をなしていて,舌尖腺Glandula apicis linguaeとよばれ,多くの導管をもって舌小帯のそばに開いている(図78).側方の舌腺は葉状乳頭のあたりにあり,後方の舌腺は多数あって舌根および有郭乳頭の領域を占めている.

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最終更新日13/02/03

 

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