Rauber Kopsch Band2. 048   

 構造によって区別すると舌腺には粘液腺と漿液腺と混合腺とがある.舌尖腺は混合性のものである.舌根の腺は一部が漿液性,一部が粘液性である.漿液性のもの,すなわち蛋自腺は有郭乳頭のところに限つて存在する.ここでは大きい集りをなしている.その導管は有郭乳頭をとりまく輪状の濠や葉状乳頭の縦の溝のなかに開いているが,それらの管壁が線毛をもつ円柱上皮で被われていることがまれでなく,また時としては味蕾をももっている(W. Märk).

 舌の小胞腺は舌小胞Folliculi linguales, Zungenbälgeとよばれて,後舌の範囲にあって,後方は喉頭蓋,また側方は口蓋扁桃にまで伸びている.舌の小胞腺の全部を合わせてまた舌扁桃Tonsilla lingualisともいう(図69).個々の小胞腺は舌の表面の円みをおびた低い高まり(直径1~4mm)としてたやすく認められる.その中心にある小さい口から奥に入ると小胞腔があつで,ここは粘膜のつづきが腔所をとりかこんでいる.小胞腺じしんは固有層のなかにあるリンパ性組織の厚い板であって,この板が腔所をとりかこんで弯曲しており,またリンパ組織のなかにかなり多数の胚中心Keimzentrenの存在することがしばしばである(図75).粘膜の一部がこの弯曲した板の外面をとりまいて,これが小胞腺の線維被膜Faserhülle, Kapselをなしている.つまり舌小胞は粘膜壁の一部がリンパ性に変化して落ちこんだものであって,全体として扁豆形あるいは球形をなしている.個体が生きている間は絶えず多数のリンパ球がリンパ性組織からでて上皮を通りぬけて小胞腔に出る(遊出Diapedesis).そしてここから唾液に加わるのである(唾液小体Speichelkörperchen).小胞腔をかこむ上皮にはしばしば広い範囲にわたってリンパ球がひどく瀰漫していて,そのために上皮の境が分らないほどになっている.そのさい上皮が広い範囲で破壊することも容易におこるのである(Stöhr).しかしこの点については58頁のHellmannの説をも参照のこと.

[図72]上下の舌における各種の腺の分布 (A. Oppel, Festschrift Kupffer 1899による.但し少しく変更してある)漿液腺は点状,粘液腺は横の破線,混合腺は斜めの格子状で示す.X-Yの線は小胞腺の領域の前方境界である.異なる種類の2つの腺が重なり合うところでは上にあるものだけが見えるようにして,下にかくれている分は点線をもってその輪郭を示してある.

[図73]舌の神経支配を示す模型図剖出および機能検査による (R. Zander) 舌神経の分布する範囲は横線をもって示し,舌咽神経の範囲は斜めの線,迷走神経のそれは小さい点をもって示してある.単一の神経が支配している舌粘膜の部分は記号が1種であるが,重複支配の部分では記号が重なり合っている.

 腺体が深いところにある粘液腺の導管が時として小胞腔に開口している.

 舌粘膜の血管としては舌動脈からの細い枝がここにきている.粘膜下組織にあるかなり太い小幹からおこる枝がすべての乳頭に達し,その2次乳頭のなかまで伸びている.上皮性の腺の終末部をとりまいて豊富な毛細血管網がある.また細い動脈が小胞腺の線維被膜を貫いて入り,リンパ性組織のなかで毛細管になっている.リンパ管は表層と深部にそれぞれ1つの網をつくっている.とくに舌根のリンパ管は豊富である.しかしこれと舌体のリンパ管とのつながりはわずかしかない.

 舌粘膜の神経は三叉神経の第3枝からくる舌神経と舌咽神経および迷走神経である.それらの経過中に小さい神経節があり,腺の分泌神経,単純な知覚神経,あるいは特殊の感覚神経として終わっている.舌神経は舌尖と舌体への味覚神経および知覚神経であり,舌咽神経は舌体の最も後部と舌根への味覚神経および知覚神経である.

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最終更新日13/02/03

 

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