Rauber Kopsch Band2. 052   

 その筋束および筋束の集まった板がオトガイ舌筋の筋板と直角に交わっており,また側縁の近くになると舌骨舌筋の束が横舌筋のなかを貫いている.舌根の近くでは横走する筋束が舌縁を離れてゆき,一部は(舌口蓋筋)軟口蓋に,一部は(頭咽頭筋の舌咽頭部)咽頭壁にいたる(図76).横舌筋の筋束の一部は舌中隔によって中絶されずに中央の線をこえて他側に入っている.ことにそれは舌尖において著しい.

4. 垂直舌筋M. verticalis linguae.これは舌の遊離部において舌背から舌の下面まで走る筋束からなっている.

 舌の動脈は主として舌動脈からくる.しかし顔面動脈および上行咽頭動脈からも細い枝がきている.静脈はこれらの動脈に相当する静脈に流れこむのである.舌の運動をつかさどる神経は舌下神経である.

6. 口蓋Palatum, Gaumen(図7981, 82, 84, 86, 87)

 口蓋は口腔の天井であって,前方の硬口蓋Palatum durumと筋肉をもつ後方の軟口蓋Palatum molleとの2部からなっている.

a)硬口蓋Palatum durum, harter Gaumen

 硬口蓋の骨性の基礎は骨膜と粘膜によって被われていて,この2つの膜は硬口蓋の前部ではたがいに密着しており,また前方および側方では歯肉Gingiva, Zahnfleischにつづいている.

 前方および側方では粘膜が厚くて固く,その色が白っぽいが,後方では薄くて軟かとなり,色も赤みを増す.正中線に沿って1つの稜線もしくは溝,あるいは縫合というべきものがあって,口蓋縫線Rhaphe palatiとよばれ,これは前方でば切歯乳頭Papilla incisivaという1つの小さい高まりをもって終わっている.切歯乳頭の位置は骨の切歯孔Foramen incisivumの下に当たっている(図79).口蓋縫線の両側で硬口蓋の前方部の粘膜が大小いろいろの丈けの低い横走する高まりをいくつか作っている.これを横口蓋ヒダPlicae palatinae transversaeといい,前方に凸のまがりを示し,このひだの数は個体により不定で,前後にならんでいずれも横にのびている.硬口蓋の後部になると粘膜が骨膜から離れて,その間を占めて粘液腺である口蓋腺Glandulae palatinaeが発達している.そしてさらに後方は軟口蓋の粘膜につづくのである(図79).

 切歯乳頭の両側に切歯管Ductus incisiviという2つの細い粘膜管の口腔への開口がある.この粘膜の小管はしばしば退化してなくなっている.それがよく発達しているときは骨の切歯管Canalis incisivusを通って上方にすすみ,鼻腔に通じている.この粘膜管がしばしばなくなっていることはヤコブソン器官Jacobsonsches Organが人間では退化していることに関連している.粘膜管はこの器官と深い関係をもつのである(鼻腔および感覚器の項を参照せよ).哺乳動物のなかでは豚および反芻類においてこの切歯管が最もよく発達している.骨および粘膜にみられる切歯管は胎児の初期に鼻腔と口腔とがひろい範囲で相通じていたこと,すなわちこの2つがもともとひと続きであったことの最後の残りであるといいうる.

 硬口蓋の粘膜は少数の低い(結合組織性)乳頭をもち,これは後部ではやや密に存在している.これは他の口腔粘膜の部分と同じように重層扁平上皮で被われている.

b) 軟口蓋Palatum molle, weicher Gaumen;口蓋帆Velum palatinum, Gaumensegel

 軟口蓋は粘膜のつくる大きなひだで,内部に筋肉をもち,口腔と咽頭腔とのあいだの不完全な隔壁をなしている.軟口蓋は硬口蓋の後縁から後下方にのびていて,その中央部に口蓋垂Uvula palatinaという箸しくのびたところがある.両側へ向かって軟口蓋から各側2つの弓形をしたひだが下方へすすんでいる.

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最終更新日13/02/03

 

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