Rauber Kopsch Band2. 057   

5. 咽頭口蓋筋M. pharyngopalatinus(図79, 86)は後方の口蓋弓にふくまれるかなり有力な筋である.

 この筋は耳管軟骨の下縁,翼状突起の内側板および鈎,ならびに口蓋腱膜の後面からおこる.最後に述べたところでは両側の筋線維がたがいにつづいている.この筋の線維は下方にすすみながら著しくひろがって咽頭の後壁にいたり,ここでその一部が他側のものとつづいている.しかし大多数の線維は下方にすすんで,その一部が甲状軟骨の後縁に付着し,また一部は中央の線に向かって走り,そこで甲状軟骨の下角からでている腱性の板に終わっている.

[図83]咽頭円蓋Fornix pharyngisと咽頭嚢Bursa pharyngica.下方よりみる.

 神経支配:軟口蓋の諸筋のうちで,口蓋帆張筋は三叉神経の第3枝,それも多くは内側翼突筋神経の枝によって支配される.口蓋帆挙筋は舌咽神経と迷走神経との枝がつくる咽頭神経叢Plexus pharyngicusから1枝をうける.同じくこの神経叢から咽頭口蓋筋もその支配神経をうけている.口蓋垂筋の神経支配についてはまだ正確に知られていない.

口蓋扁桃Tonsillae palatinae, Gaumenmandeln(図7981, 86, 87)

 口蓋扁桃は榛実の大きさで,やや長めの円くて平たい器官で左右1つずつあり,扁桃洞のなかにあって,その前後にある口蓋弓とほぼ同じくらいの高さに突出している.口蓋扁桃の外側面は頭咽頭筋の内面に接している.そして内頚動脈はこれからおよそ1cm離れたところを上方にすすむ.この扁桃の外面は結合組織性の被膜で境されていて,この膜から扁桃じしんをそつくり分離することがたやすくできる.この扁桃の内面すなわち口峡に向かった面は口腔粘膜で被われていて,この粘膜が扁桃の内部に突起を入れており,かくして12ないし15の深いへこみ,すなわち扁桃小窩Fossulae tonsillaresができている.

 口蓋扁桃の微細構造:リンパ性の組織からなり,この組織が粘膜とともにはなはだしくうねった板をなし,その板にひじょうに数多くのリンパ小節が相接して存在するのである(図81).

 この扁桃の組織はその成り立ちおよび病理的な観点からして,リンパ組織と上皮の合したものlymphoepitheliales Gewebeであるという.Schmincke, Beitr. path. Anat. 68. Bd.,1921.

扁桃内の腔所の壁は乳頭をもち,この乳頭は枝分れしないのと枝分れするのと両方がある.舌の小胞腺ですでに述べたように,ここでも個体の生きている間はリンパ球が上皮を貫いて腔所のなかに絶えず出てゆく.

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最終更新日13/02/03

 

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