Rauber Kopsch Band2. 070   

 幽門は多くのばあい第12胸椎の右にある.剣状突起の左側縁と下端が小弯の位置に当たっている.胃の右方端は肝臓で被われているが,その前方を右の肋骨弓の第8肋軟骨の部分が下行する.左の肋骨弓は胃を熱めの方向に切っており,これを大きさの異なる2つの部分に分けている.胃底は左の第5肋軟骨の高さにまで上方に突出している.III. 他の諸器官との関係syntopischとしては胃は数多くの腹部器官と重要な位置関係をもつので,胃の表面に多数の領域すなわち接触面Berührungsfelderが区別されている.しかしその広がりぐあいは変化に富むし,伺一人であっても身体や器官のその時どきの状態によって,ある程度変のものであることを考えていなければならない(F. W. Müller,1923を参照のこと).

 小弯は肝臓の左葉に被われるが,大弯は横行結腸に接している.胃の前壁は右側では肝臓の方形葉と左葉により,左側では横隔膜の肋骨部と前腹壁によって被われている.胃の後壁は横隔膜の腰椎部と膵臓に接する.胃底は横隔膜頂の左の部分にある.胃底の後部は左の腎臓と腎上体,ならびに脾臓に接している.

 したがって接触面としてつぎのものがある.肝臓面Facles hepatica,自由面(あるいは腹壁面)F. libera s. epigastrica,横隔面F. phrenica,膵臓面F. pancreatica, 結腸結腸間膜面F. colomesocolica,腎臓面F. renalis,腎上体面F. suprarenalis,脾臓面F. lienalis(図97, 98).肋骨下角のところにある自由面と肝臓面が,前腹壁のいわゆるMagengrube(胃窩)に当たっている.

[図96]胃のレントゲン像 背腹の方向に照射. 少量の造影剤を用いてある.粘膜の像は正常. (W. Knotheの作)

[図97, 98]成人の胃の接触面 図97は前面, 図98は後面.

 生体において胃の位置関係は体の姿勢や呼吸運動によって著しく変るものである.Hasselwanderはレントゲン線でしらべて,例えば背位で呼気のとき幽門はそれにつづく十二指腸の部分とともに第12胸椎に相当するところにあるが,直立位で吸気のときは第3腰椎に相当する.すなわち2椎体の高さにわたって移動しうることを証明している.

 臥位であるか立位であるかによって胃の位置が大いにちがう.直立位では大弯は左下方に,小弯は右上方に向い,前面は前方に,後面は後方に向かっている.

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最終更新日13/02/03

 

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