Rauber Kopsch Band2. 074   

 粘膜下組織Tela submucosa.疎な結合組織のかなり厚い層で,弾性線維をもち,脂肪細胞の小さい群があり,さらに血管や神経を含んでいる.

 粘膜Tunica mucosa.胃壁の最も内方の層であって,新鮮な状態ではバラ色をした,表面の滑らかな厚い膜である.子供のときには色が比較的赤くて,年令をますとともに白つぼくなり,ついには灰色になる.

 噴門において食道の白い粘膜が鋭い鋸の歯のような縁をもって(Zackenrand der beiden Mucosa,両粘膜の鋸状縁)胃の赤みがかつて光沢のない粘膜と境している.

粘膜は幽門部では胃体よりいっそう厚く,胃底では胃体よりいっそう薄くできている.そして胃壁がひっぱられていないときには粘膜の内面が多数の長短いろいろの低いひだをなしており,これが種々の方向に走っているが,噴門と幽門に向かっては放射状にならんでいる.小弯に沿って縦走するいくつかのひだがしばしばみられて(図93),これらがWaldeyerの命名したMagenstrasse(胃の通路の意)をなしている.胃の壁がひっぱられると,これらのひだはすべて消える.

 胃体と幽門部の境で縁の切れ込みに一致して,粘膜に横走するひだが不完全な形ながら多少ともできていることがまれでない.これはPlica praepylorica(幽門前ヒダ)とよばれる.胃と腸との境には重要な幽門弁Valvula pyloriがある.その2つの粘膜板(胃のがわと腸のがわ)のあいだに幽門括約筋の線維束が入りこんでいる(図93, 98).

 幽門弁の高さは個体的に違っているし,また1つの弁でひだの突出する高さが場所によって異なることがある.そのときには弁の口が中心をはずれているわけである.

 胃の粘膜には大きいひだのほかに胃小区Areae gastricaeという小さい高まりが存在し,これは規則正しい浅い溝によってたがいに分けられ,またこれによって粘膜の乳頭状態Status mamillarisがひきおこされるのである(図94).胃小区の内部にはなはだ多くの点状の小さいくぼみがあって,胃小窩Foveolae gastricae, Magengrübchenとよばれ,これは胃腺の前庭が開く口である(図95).

[図103]胃の筋肉の縦走線維層

[図104]胃の筋肉の輪走線維層と斜走線維層 *幽門部の境(lncisura angularis角切痕)

S.074   

最終更新日13/02/03

 

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