Rauber Kopsch Band2. 079   

II.小腸Intestinum tenue, Dundarm (図109, 113134)

 小腸は胃の幽門からはじまり,すなわち第1腰椎の側面のところからおこって右の腸骨窩まで伸びており,ここで大腸に開口している.

 薄い壁をもっていて,長さおよそ2.5~4.4mの管であり,数多くのうねりをなして,主として腹腔の中部と下部とを占め(WaldeyerのいうDarmbauch,腸腹の意),大腸は弓形をえがいてこれを左右上の3方向からかこんでいる.

 小腸の管はどこも同じ太さというわけでなくて,初めは2.5~3 cmの径であるが,終りの方は2~2.5 cmに減ずる.そして小腸の大部分は空回腸Jejunoileumであって,この部は小腸間膜Mesosteniumという腹膜のひだによって後腹壁に付いている.それで空回腸を一名腸間膜小腸Intestinum tenue mesostenialeとよぶ.

 小腸に3つの部分が区別される.第1の部は十二指腸Intestinum duodenumといい,30cmの長さがあり,胃についている.そして小腸のうちでは最も太くて,その位置が最も固定している部分である.その残りがまたなかなか長いが,そのうち初めの2/5が空腸Intestinum jejunumあとの3/5が回腸Intestinum ileumであって,この2つを合せたものが腸間膜小腸,あるいは簡単に空回腸とよばれるのである.

1. 十二指腸Intestinum duodenum, Zwölffingerdarm(図99, 113, 114, 125, 159, 160, 164, 166. )

 十二指腸は30cmの長さがあり(大沢岳太郎(大沢新撰解剖学2巻,1934)によると,日本人で十二指腸の長さは約25cmである.また鈴木文太郎(人体系統解剖学3巻上,1920)によると,硬化した死体で測ると男の乎均24. 9cm,女の平均22.7 cmであった.直径は男3.7cm,女2.7cm),幅は4~6cmで,馬蹄形の大きい弓をえがき,そのへこんだ側が膵臓の頭をいだいている(図114, 164, 166).十二指腸に3部が分けられる(図164, 166).

 第1の部は上部Pars cranialisといい,最も短い部分で4~5cmの長さがあり,幽門ではじまって,軽く上後方かつ右方にすすみ,胆嚢の頚まで達して,ここで急に上十二指腸曲Flexura duodeni cranialisをなしてまがり下行部pars descendensに移行する.この第1の部が十二指腸のなかでは最も自由に動きうるところで,両側に腹膜の被いをもっている.この部のうしろを胆管がとおり,また肝臓への血管が通っている.

 下行部は上部の2倍の長さがあって,胆嚢の頚のところではじまり,右の腎臓の表てをその左側によつた所,および下大静脈の表てを下方にすすみ,第3あるいは第4椎の高さに達して,ここで下十二指腸曲Flexura duodeni caudalisをなして下部pars caudalisに移行する.下行部は前面のみが腹膜に被われている.下行部の前を横行結腸と横行結腸間膜が通っている.横行結腸間膜の根によって被われている部分を十二指腸の没部Pars tecta duodeniという.下行部の左側に膵臓の頭が接している.総胆管は下行部の左縁のうしろを下方にすすみ,膵管(これはある短い距離だけ総胆管と伴なってすすむ)とともにだんだんと腸壁を貫く.そのために下行部の粘膜に十二指腸縦ヒダPlica longitudinalis duodeniという縦の高まりができていて,その下端を[]十二指腸乳頭Papilla duodeni(major)といい,ここに総胆管と膵管とが共同に開口する.この乳頭は幽門から約10cm離れている.ここに開く管の終りのところがしばしばやや膨らんでいて,以前にはそれがファーテル憩室Diverticulum Vateriとよばれた.十二指腸の粘膜がつくる横走のひだの1つが,その開口のところを被うようにして横ぎつている(図114).

 全例の96%において(Keyl 1925)大十二指腸乳頭の上方2.3cmのところに副膵管の開口がある.そこは実際には乳頭といえるほどの高まりをしていないことが多いボ,小十二指腸乳頭Papilla duodeni minor(Santorini)とよ.fれる.-Keyl, R., Morph. Jahrb., 55. Bd.,1925.

 下部Pars caudalisは十二指腸のなかで最も狭いが最も長い部分であって,右から左にすすみ,また斜め上方に向かっている.そして第2腰椎の左側面に達している(ここを上行部Pars ascendensという).第1腰椎体の下縁の高さで,十二指腸空腸曲Flexura duodenojejunalisという鋭いまがりをなして,空腸に移行する.

 上腸間膜動脈のまおりを包む密な結合組織から1本の索がきて十二指腸空腸曲に達して,その位置の固定に役だっている.この索は結合組織と平滑筋(十二指腸提筋M. suspensorius duodeni)よりなっている. 図113.

S.079   

最終更新日13/02/03

 

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