Rauber Kopsch Band2. 082   

 十二指腸の血管は上下の膵十二指腸動脈Aa. pancreatico-duodenales cranialis et caudalis よりくる.リンパ管は膵頭の前方と後方にあるリンパ節にいたり,そこから腹腔リンパ節にゆく.

 局所解剖:1. 全身に対する位置関係としては十二指腸は中腹部Regio abdominis mediaの脇部Pars umbilicalisにあり,一部は上腹部Regio abdominis cranialisの内側部Pars medialisにある(第1巻図149を参照せよ).II. 骨格に対する位置関係:十二指腸は第12胸椎体の高さから第3腰椎体の高さに及んでいる.そのさい下行部は椎体の右側面に接しており,下部は斜め上方に向い第3および第2腰椎体の前をこえて左方へすすむ.そして十二指腸空腸曲は第1腰椎体の下縁の左側に接している.III. 近くの諸器官との位置関係:十二指腸は肝臓・胆嚢・右の腎臓と腎上体に接触しており,膵臓の頭を抱きこんでいる.また下大静脈と腹大動脈の前を通り,また十二指腸じしんが上腸間膜動静脈と交叉する.上部のうしろに門脈・総胆管・胃十二指腸動脈がある.下行部の表てを横行結腸間膜の根が横にとおる.なお下部の表てを小腸間膜根が上腸間膜動静脈とともに通っている.

 生体においては十二指腸は他のものによって動かされる性質が著しい.体の姿勢により,呼吸により,また腹筋群のはたらきによって,十二指腸は2つの椎体の高さにわたって上方ないし下方に移動する.(70頁の胃の項を参照せよ.)高齢では十二指腸が第4あるいは第5腰椎の高さまで,ときには岬角まで下ることをVogtが69才から85才までの人でしらべて,その証拠をみたのである.Vogt, Verh. anat. Ges.,1920,1921.-Pernkopf, E., Z. Anat, Entw.,97. Bd.,1932.

[図117]胃と十二指腸と空腸 レントゲン像背腹方面の照射.ケルクリソグヒダがはなはだ明瞭にみえる.(C. ElzeとG. Ganterによる)

2. 空腸と回腸Jejunum et Ileum, Leerdarm und Krummdarm(図109, 115117, 160.)

 空回腸すなわち腸間膜小腸は十二指腸空腸曲ではじまり,回盲結腸口Ostium iliocaecocolicumで終る.そして腸間膜縁Gekröserandと自由縁freier Randとをもっている.

 空腸ははっきりした境なく回腸に移行する.しかし全体としてみると,空腸と回腸のあいだには一連の差異がある.その違いはつぎのようである.

1. 太さのちがい(空腸の方が太い)

2. 壁の厚さの差異(空腸の方が壁が厚い)

3. 脈管の豊富さのちがい(空腸の方が脈管にいっそう富み,いっそう赤くみえる)

4. ひだの豊富さのちがい(空腸の方がひだが多い)

5. 腸絨毛をもつことのちがい(空腸の方が絨毛が多いし,その形状も異なる)

6. リンパ小節をもつことのちがい(回腸には縦の方向につぎつぎと列んで集合リンパ小節があり,これは空腸に向かってだんだんと小さくなり,終には全くなくなる)

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最終更新日13/02/03

 

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