Rauber Kopsch Band2. 086   

 絨毛(図118, 125127)は粘膜のつくる突起であるから,粘膜じしんと構造を等しくするのであるが,それでも絨毛には特別に述べるべき2,3のことがある.その数はおよそ400万に達する.これは腸管内の栄養物質のなかにつかつていて,摂り入れるべきものを摂り入れる.おのおのの絨毛が1つの中心乳ビ腔zentraler Chylusraum od. Zottensinusをもっている.これは腸粘膜の乳ビ管が棍棒状に広がって,その内面が内皮によって被われているのである(図118, 127).大きい絨毛では2つ以上の中心乳ビ腔がある.またこの乳ビ腔と上皮とのあいだに絨毛の血管が広く分布している(図127, 128).ここに分布する血管の量ははなはだ多いのである.

[図127]回腸の絨毛 中心乳ビ腔は青,血管は黒くしてある.(Teichmannによる)

[図128]ヒトの空腸の上部における三角形の花弁状を呈する1個の絨毛内の血管×120.黒は動脈,灰色は血液を他にみちびく静脈.(Spanner, Morph. Jahrb., 69. Bd.,1932)

 絨毛の血管に血液がいっぱいに充ちると絨毛が勃起する.その反対のはたらきをする装置,すなわち絨毛を周期的に縮めるものは絨毛の結合組織のなかをその長軸の方向に貫いている平滑筋束のこぎれいな網状の集りである.この平滑筋網は粘膜筋板からきているのであって,それとつづいている.絨毛内の筋肉にはもちろん神経がきている.また結合組織の隙間にリンパ球があって,その他にリンパ球は上皮のなかにもあり(図119),また上皮の自由表面にもリンパ球が認められる.

 リンパ球は遊走して上皮を貫いて,その自由表面にでる.このことはすでにPh. Stöhrが記載し,その後にWolf-Heideggerによって確かめられたのである(Z. mikr.-anat. Forsch., 45. Bd.,1938).

 絨毛のはたらきはかなり古くから次のように考えられている.血液の流れが絨毛を勃起させる.そうすると絨毛の結合組織はひっぱられる.そのために中心乳ビ腔は広がって,その間に上皮がはたらいて吸収した乳ビに対して,この広がった腔所が吸いこむように作用する.かくして中心乳ビ腔が次第に充たされる.ついで絨毛の平滑筋線維が収縮して中心乳ビ腔の内容物が粘膜下組織のリンパ管叢に向かって圧しだされる.それからふたたび絨毛が1血流のために勃起して,上に述べたことが新たにくりかえされる.中心乳ビ腔から圧しだされた内容物が逆流しないために弁がそなわっている.しかしGraf Spee(Arch. Anat. Phys.1885)による中心乳ビ腔は絨毛が短縮したときに広くなり,勃起したときに狭くなるというのであって,この点が上に述べたのと逆になっている.

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最終更新日13/02/03

 

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