Rauber Kopsch Band2. 087   

 絨毛の形は小腸の各部を通じて必ずしも同様でない.十二指腸上部では幅のひろい絨毛が存在する.それにつづく所では同じ十二指腸のなかでも絨毛が葉状といえる形になり,ついで幅が次第に減じて長さが増す.空腸では舌状というような形であり,終りに回腸では糸状となる.

 M. Heidenehain(Anat. Anz., 40. Bd.,1911)によるとネコの空腸では1 cm2に4500の絨毛があって,そのうち1/3は単純でなく,2つ以上の絨毛が合わさった形のものである.1 cm2の腸表面がもつ上皮の吸収面積は絨毛の存在のために5.6 cm2に拡大している.1つの指状の絨毛1:皮がおよそ2800の細胞をもっている.そうすると1 cm2の腸表面が約2000万の上皮細胞をもつことになる.

 絨毛の高さは0.2~1.2mmの間である.絨毛は十二指腸で最も密に生えており(1 cm2に22~40)回腸ではその数がだんだんと減ずる(30~18,なおこれ以下にもなる).

 おのおのの絨毛は1本(あるいは2本以上)の動脈をもっていて(図127, 128),これが途中で枝分れせずに絨毛の尖端にすすみ,ここで2本の枝に分れる.そのうちの1本だけが上皮の下にある密な毛細管の網に移行し,他の1本はこの毛細管網と結合せずに導出する静脈に直接に移行している.すなわち動静脈吻合arterio-venöse Anastomoseが存在する(SPANNI;R, Morph. Jahrb., 69. Bd.,1932).

 なお粘膜には大きい横のひだが永続的に存在している.これがケルクリング襞Kerkringsche Faltenすなわち輪状ヒダPlicae circularesであって(図115),粘膜の全周の1/2から2/3に及んで伸びており,小腸の上半でははなはだ密に上下にならんでいる.

 このヒダの最も大きいのはおよそ5cmの長さがある.大小いろいろのヒダがかわりがわりにならんでいる.そのなかには叉状に分れているのがあり,たいていのものは中央部が最も高い.筋層はこのヒダのなかに入りこまない.絨毛と同じく,このヒダの存在は表面積を著しく広くする.そして同時に腸の内容物があまりに速く通過しないようにするのである.十二指腸の初まりの所にはひだぶない.ヒダは幽門から3~5cmの所ではじまる.そして十ニ指腸縦ヒダの下方で急に最高の発達となる.空腸の中央のあたりからは輪状ヒダが小さく,また数が少なくなりはじめる.回腸の中央に向かってこのひだがますます不定で不規則となり,しばしぼ斜めに走っており,終にはなくなる.回腸の終りの部分をつよくひつばってみると,そのとぎまで存在していた丈けの低いひだが完全に消えてしまうことがまれでない.

 絨毛とヒダのほかに粘膜はなお次に述べるような腺をもっている:

1と2. 肝臓膵臓

3. ブルンネル腺Brunnersche Drüsenすなわち十二指腸腺Glandulae duodenales(図125).これは幽門から8~10cmの範囲にある.十二指腸の下方部ではわずかに散在する程度である.

 これは複合胞状管状腺であって,その腺体は主として粘膜下層にある(図125).しかしその少なからぬ部分が固有層のなかでリーベルキュン腺のそばにあることもしばしばである.ブルンネル腺の終末部すなわち腺体は円柱状あるいはピラミッド形の腺細胞より成り,この細胞は明るい基質とそのなかに散らばる顆粒をもっている.核は卵円形で細胞の基底部にある.

 Stöhrと Oppelはその導管および終末部の上皮のなかに,後に述べるパネート細胞と構造が一致するところの著しく顆粒性の細胞をみている(図120).ブルンネル腺はペプンンおよび一種の澱粉分解酵素を分泌する.

4. 腸腺Glandulae intestinalesすなわちリーベルキュン腺Lieberkühnsche Drüsen.これは小腸にも大腸にも,その粘膜のあらゆる部分にわたって多量に存在している(図123126, 129, 130. ).

 これは腸の内面に対してだいたい垂直にのびている細い管状の腺であって,その腺底が叉状に分れていることは少ない.その長さは0.3~0.4mmであって,繊細な基礎膜と円柱状の細胞とからできている.腸液Darmsaftを分泌するものである.しばしば1つの絨毛の根もとが冠状にならんだ腸腺の開口によってとりまかれている.小腸の全体にわたってリーベルキュン腺の腺底にパネート細胞Panethsche Zellenという一種特別な顆粒性の細胞がみられる(図121, 123).その顆粒はでき初めには小さいが,だんだん大きくなって,腺腔にでてゆき,そこで完全に溶ける.それは漿液性の唾液腺におけると同じ関係である(42頁を参昭のこと).

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最終更新日13/02/03

 

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