Rauber Kopsch Band2. 090   

 リンパ管は粘膜と筋層とに存在する.粘膜にあるのは乳ビ管で,筋層のものはふつうのリンパ管である.絨毛の中軸部にある単一あるいは2つ以上の中心乳ビ腔zentrale Chylusräume od: Zottensinusについてはすでに述べた. 他の毛細リンパ管はリーベルキュン腺のあいだを下行する.これは中心乳ビ腔のつづきと合して固有層内で腸腺のすぐ下の所で網を形成しており,この網が多数の吻合によって粘膜下組織内のよく発達したリンパ管網とつジいている(図118).この網からでてゆくリンパ管が筋層を貫くが,そのさい筋層の内外両層のあいだにある特別なリンパ管網(interlamindrer Lymphplexus von Auerbach,アウエルパッハの筋板間リンパ管網)をうけ入れるので,つまり筋層からのリンパがすべてこ,で集められるのである.筋層を貫いてでた腸壁のリンパ管はすなわち漿膜下リンパ管subseröse Lymphgefäßeであって,これはなお腸の縦軸の方向に沿ってある距離だけ走ることが多く,ついで小腸間膜の両葉のあいだに入り,そこで小腸間膜リンパ管mesosteniale Lymphgefäßeとなる.

 小腸の神経は主として上腸間膜動脈神経叢からくる.この神経叢は交感神経の腹腔神経叢と迷走神経の枝とからでる神経によってつくられている.そして上腸間膜動脈の諸枝に伴って腸壁に達すると,主として無髄線維より成るその神経は漿膜下の網をつくり,ついで縦走筋層を貫いて,これと輪走筋層のあいだに筋板間の神経叢interlaminärer Nervenplexusを形成する.これは腸筋神経叢Plexus myentericusまたは アウエルバツハ神経叢Auerbachscher Nervenplexusとよばれ,多極性の細胞のあつまつた多数の神経節をもっている(図133).これからおこる細い神経が輪走筋層を貫いて粘膜下組織に達して,ここで粘膜下神経叢Plexus submucosusすなわちマイスネル神経叢Meißnerscher Nervenplexusをなしている.この神経叢は網の目がせまくて,神経細胞の集団がアウエルバッハ神経叢にくらべて小さい.これからでる線維束が粘膜筋板や絨毛内の平滑筋に分布し,その他の粘膜の部分にも終るのであって,その終るぐあいは胃(78頁)で述べたのと同じようにPh. Stöhr jr. のいう“神経性の終末細網”nervöses Terminalretikulumの形である.構築的にみた腸壁の構造についてはGoerttlerの研究がある(Morph. Jhrb.,1932).

十二指腸に付属する大きい腺

肝臓Hepar, Leber(図99, 100, 113, 135155)

 肝臓の基本形は3面をもつプリズムで,その縁や角が

前縁ventrale Kanteのほかはみな円みをおびているといってよかろう.暗い赤褐色を呈していて,重さは約1500gもある.(日本人の肝臓の重さは男(914例)の平均1262g,女(457例)の平均1147gである.保田収蔵:九大病理学教室臓器統計.福岡医大誌11巻360~423,1918. また山田致知(日本人の臓器重量.医学総覧2巻14~15・1946)によれば男(1186例)の平均1264g,女(762例)の平均1181gである.)

 これは体重のおよそ1/36にあたる.胎児や新生児では肝臓が比較的にはもっと大きい.また肝臓の比重は1050~1060である.赤褐色を呈するその実質は充実したものであるが,はなはだ固いといえるものではない.たやすく切れるし,またひき裂くことができる.そして生体において圧や震動によって壊れることがまれでない.他の諸器官が同じ外力で何らの傷をうけないばあいにもそれがおこる.裂けた肝臓の面は滑らかでなくて,小さい高まりをもってでこぼこした観を呈するが,それはこの器官の構造からたやすく理解できることである.

 肝臓の横隔面Facles diaphragmaticaは凸をなしていて,これに2部がある.横隔膜に密着している後方の比較的小さい部分すなわち付着部Pars affixaと,腹膜で被われているいっそう大きい部分すなわち自由部Pars iiberaである.内臓面Facles visceralisは平らでなくて,全体として凹をなしている.前縁Margo ventralisは鋭いへりである.肝臓の実質は軟いので,この器官をとり出して平面上におくと,その自然の形ははなはだしく失われる.

 横隔面(図136, 138)は横隔膜頂の凹面に密接している(図99).腹膜のつくるひだである肝鎌状間膜Mesohepaticum ventraleが,表面的に大きい方の右葉と小さい方の左葉とを分けている.このひだのあたりで心臓のための浅いへこみがある(心圧痕Impressio cardiaca).このへこみは横隔膜じしんにもみられるのである.

 後部(図138)には食道による深いくぼみ,すなわち食道圧痕Impressio oesophagicaがあり,なお肝静脈の開口所である3つあるいは2つの大きい孔がみられる.

 前縁には膀静脈の閉鎖し退縮したもののために生じた肝切痕Incisura hepatisがある. 内臓面もまた大部分が腹膜で被われていて,ここに幾つかの溝があって,若干の部分がそれによって境されている.

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最終更新日13/02/03

 

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