Rauber Kopsch Band2. 091   

その溝の1つは横走して,その両端のところに左右1つずつ矢状方向の溝がつづている.それゆえ内臓面の溝の像はだいたいにH字形をなすのである.

 横の溝がいわゆる肝門Porta hepatisであって,太い血管や胆汁をみちびく総肝管や神経が肝臓に出入するところであり,ひを通らないのは肝静脈だけである.血管や総肝管などが右枝と左枝に分れて肝臓に出入するが,その両枝は肝門のほとんど両端のところでみえなくなる.

 左側の縦溝は[]矢状裂Fissura sagittalis(sinistra)といい,肝臓の右葉と左葉の境をなすもので,前後の2部からなる.前部は臍静脈索部Pars chordae venae umbilicalisといい,胎児および新生児のときには臍静脈をもっていたが,後にはこの静脈が閉鎖してできた臍静脈索Chorda venae umbilicalisをもっている.この索が左葉と方形葉の境をなす.その両葉の縁のところを肝臓の実質が橋のようにつないでいることがあって,そのときは溝の一部が管に変わっているわけである.左の縦溝の後部は静脈管索部Pars chordae ductus venosiといって,左葉と尾状葉の境をしており,胎児のときには膀静脈と下大静脈を連ねる静脈管Ductus venosusをもっていたが,後にそれが閉鎖した残りものである静脈管索Chorda ductus venosiがここにふくまれ,その残りものも次第になくなる傾向がある(Böttcher;R,1923).

 右側の縦溝はやはり前後の2部からなり,この両部をへだてて尾状突起Processus caudatusという肝臓の実質からなる1つの突出部がある.縦溝の前部は胆嚢窩Fossa vesicae felleaeであって,胆嚢をうけ入れるためにへこんでいる部分で,鋭い前縁のところから一と続きに肝門のところまで伸びている.後部は下大静脈窩Fossa venae cavae caudalisといい,下大静脈を完全あるいは不完全に(その程度はいろいろだが)とりかこんでいる.これが尾状葉と右葉の境であり,他方では胆嚢窩が方形葉と右葉の境をしている.

[図135]肝臓,横隔面(2/3)

S.091   

最終更新日13/02/03

 

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