Rauber Kopsch Band2. 095   

 肝臓内の胆管は横断面が円くなくて楕円である.その角のところがら細い枝が2列をなして側方にでている.(Hjortsjö, Acta anat.,11. Bd.,1951. )

 胆嚢管Ductus cysticusは3~4cmの長さで,左下方に走って,胆嚢の方向とはある角度をなしており,総肝管と合して総胆管となる.

 総胆管・総肝管・胆嚢管および肝臓内の比較的太い胆管の粘膜の表面には胆管粘液腺Gallengangdützenの開口として小さいへこみ(胆管小窩Gallenganggrübchen)がみられる.

 胆嚢Vesica fellea, Gallenblaseは西洋梨の形をした膜性の袋であって,その長さは8~12cm,最大の幅は4~5cmで(山口寛(邦人胆系の局所解剖知見.解剖学雑誌3巻,191~229,1930)によれば,日本人で,は胆嚢の長さ 8.6cm,同じく幅3.8cm;胆嚢管の長92.8cm;総肝管の長さ3.2cm;総胆管の長さ6.7cmである.),容積はおよそ30~50ccmである.胆嚢体Corpus vesicae felleaeは肝臓の胆嚢窩のなかにある.胆嚢底Fundus vesicae felleaeは下前方かつ右に向かっていて,肝臓の前縁を越えており,一方胆嚢頚Collum vesicae felleaeはその反対の位置を占めている.胆嚢は結合組織によって胆嚢窩に付着している.その自由面は腹膜の一部である胆嚢漿膜Tunica serosa vesicae felleaeによって被われ,この膜は肝臓から胆嚢の表てにうつってきている.この漿膜が普通のばあいより深く入りこんでいるときには,短い腸間膜の形になっていることがある.胆嚢の頚は次第に細くなって胆嚢管に移行するが,そのところで若干二数の(多くは2つの)ラセン状のまがりをなしている.

 胆嚢は上述のように不完全な漿膜を被むるが,そのほかに2層をなす比較的よわい(Schreiber, H.,1939による)筋層Tunica muscularis veslcae felleaeと粘膜Tunica mucosa vesicae felleaeをもっている.粘膜には多数の小さいひだがあって,細い格子状を呈している(Plicae reticulares tunicae mucosae,粘膜の網状ヒダ).胆嚢の頚ではこの格子状のひだがなくなって,その代りに横走するひだがあり,これが一と続きになってラセン状のひだ,すなわちラセン弁Valvula spiralisとなっていることがある.またこのラセン弁が胆嚢管のなかまでかなり遠く伸びていることがある.

 胆嚢の局所解剖. I. 全身に対する位置関係としては胆嚢は上腹部の内側部で,右の肋骨弓の縁にすぐ接している.II. 骨格に対する位置関係としては胆嚢底は右の腹直筋の外側縁が第8ないし第9の肋軟骨とつくる角のところに当たっている.III. 近くの器官との位置関係としては胆嚢体は肝臓と癒着しており,胆嚢の底部は右結腸曲に,またその頚は十二指腸上部に接している.

 胆嚢と総胆管は1つの係蹄をなしていて,この係蹄の頂きはヒ方に向い,ここが胆嚢管に当たっている.係蹄の前脚は胆嚢であり,後脚は総胆管である.内容の充ちているとき胆嚢の底は(H. Schreiber, Klin. Wochenschr.,1943)若年および中年の男では多くのばあい十二指腸乳頭より1~2cm上方にあるが,またこの乳頭より下方にあることもまれでない.

 変異:時として胆嚢が欠けている.そのときは総肝管の一部が途中で広くなっていたり,肝臓のなかに向かって広がっていたりする.また胆嚢の形が異常なこともある.横の方向に,いっそうまれには縦の方向にくびれていることがある.肝臓と胆嚢とのあいだに細い胆管による直接のつながりがあること(肝胆嚢管Ductus hepatocystici)は多くの動物では正常にみられるが,人間においても時おりみられるのである.肝臓の左右両葉からでる総肝管がしばしば長いあいだ離れたままで十二指腸に向かっている.時として総胆管が膵管とは別々の口をもって十二指腸に開いている.

肝臓を被っている腹膜(漿膜Tunica serosa)

 肝臓の表面は2,3の個所を除いて腹膜によって被われているが,この腹膜は丈夫な結合組織である漿膜下組織Subserosaによって固く肝臓の実質と結びついている.この結合組織は肝臓の全表面を包んでいて,ことに漿膜が欠けているところ,すなわち横隔面の付着部と内臓面の肝門とでいっそう強くまた明瞭に発達している.その内面が肝臓の物質と固く着いていることは,この結合組織が肝小葉を包みその中まで入る細かい結合組織性の網と直接につづていることから分る.肝門ではそれが肝被膜Capsula hepatisと結合している.

 肝臓の表面で腹膜に被われていないところは付着部・肝門・胆嚢窩・下大静脈窩であり,左の縦溝の幅のせまい個所もそうである.

S.095   

最終更新日13/02/03

 

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