Rauber Kopsch Band2. 098   

 門脈は腹腔のなかにふくまれる消化器からのほとんどすべての静脈が合一することによってできる.すなわち胃・腸・脾臓・膵臓からの静脈によってつくられる.直腸の終りの部の血液だけは下大静脈に達する.門脈もまた肝臓の内臓面の横溝に入る.そこで肝動脈と同じように右枝Ramus dexterと左枝Ramus sinisterという2つの主枝に分れる.

 胆嚢の静脈は全例の10%にだけ門脈に開口し,78%では直接に肝臓の実質に入りそこで毛細管に移行している.(Petrén, Stockholm 1933)門脈の左枝と隣静脈あるいはその閉鎖した残りものである臍静脈索Chorda venae umbilicalisとがつながっている(図100, 136).この結合と反対がわへ門脈の左枝から静脈管索Chorda ductus venosiがでて,これは肝静脈の左方の1つか,あるいは直接に下大静脈とつづいている(図136).(胎児の循環の項を参照せよ)

 肝動脈と門脈は総胆管とともに小網の肝十二指腸部の右側縁のなかに包まれている.多数のリンパ管や神経にともなわれて,これらの血管は肝門にいたり,肝臓のなかに入る.そのさい肝被膜Capsula hepatisという結合組織の1層がこれらの脈管などをとりまき,この被膜は肝門のそとでも,すでに珍れらのまおりをかこんでいる.

 肝静脈Vv. hepaticae, Lebervenenは肝臓から血液を他に導くもので,上に述べた血管とは全くちがった道を通る.これは付着部において肝臓からでてくる.それは下大静脈窩の底において2つまたは3つの幹をもって終り,下大静脈が横隔膜の人静脈孔を通り抜ける直前のところで,この静脈に合する(図166).

 肝臓のリンパ管には浅層のものと深層のものとがある.しかし両者が肝臓の全体でたがいにつながっている.深層のリンパ管は肝小葉の内部で毛細血管のまわりのリンパ腔としてはじまり,血管とともに走って肝門からでる.そこで内臓面の浅層のリンパ管および横隔面の一部からのリンパ管と合して,腹腔リンパ節にすすむ.

 横隔面のリンパ管はいくつかの群をなしている.肝臓の中部からは5本あるいは6本の小幹が肝鎌状間膜にいたり,合して1本の幹となって,これは横隔膜の胸骨部と肋骨部の筋束のあいだをへて前縦隔リンパ節に達する.第2群は右の方へ右三角間膜にすすみ,1本あるいは2本の小幹に合して横隔膜を貫いて,その上面を内側にすすんで胸管に入る.第3群は肝臓の左葉からぎて左三角間膜において少数の小幹にまとまり,横隔膜を貫いて前縦隔リンパ節に達する.肝臓の前縁の近くにあるリンパ管は内臓面のリンパ管といっしょになって肝門にすすむ.

肝臓の神経

 肝臓に多数の神経が分布するが,これは迷走神経と交感神経からくるもので,大部分が無髄である.肝動脈に伴って肝臓の内部に入る.ここでは胆管と血管といっしょにすすんでおり,なお胆嚢にも分布する.胆嚢でも,また肝臓の内部でもその経過の途中およびそれがつくる神経叢のなかに,神経細胞が個々にあるいは群をなして存在し,これは小葉間の領域にまでみられるのである.小葉間組織のなかにある小葉間神経叢interlobulares Geflechtからでる神経線維が肝小葉のなかに入り,肝細胞索と毛細血管壁とのあいだにあって,網の目のひろい終末網をなしている.神経の欺末としては肝細胞の表面に接する小板状のものが神経の経過の途中にみられ,いっそうまれであるが肝細胞の内部に,小さい輪あるいは小さい塊りの形をした終末がみられる.この塊りもよくみると原線維の骨ぐみでできている(Riegele, L, Z. mikr.-anat. Forsch.,14. Bd.,1928).

肝臓および胆嚢の微細構造(図140154)

 肝臓はたがいに密接したひじょうに多数の肝小葉Lobuli hepatis, Leberläppchenからなっていて,この小葉の形と大&さははなはだまちまちである.肝小葉は径1~2.5mmの小さいもので,角と面をたくさんにもっており,規則正しい形のときは小さいプリズム状であり,その幅よりも長さがいくらか大である.各小葉に中心部zentraler Teilと辺縁部peripherischer Teilとが区別されるが,その境はわれわれが頭のなかで考えるだけで,実在はしない.中心部は肝静脈の毛細血管網をもち,辺縁部は門脈のそれをもっている(図141).

 ヒトでは肝小葉は血管の列び方や実質のぐあいで,たやすくその境を指摘することはできるが,しかし隣りの肝小葉とのあいだがはっきりと分れていない.

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最終更新日13/02/03

 

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