Rauber Kopsch Band2. 099   

それは結合組織性の隔壁がうすくて,小葉どうしのあいだでその毛細血管網も肝細胞網もたがいにつながっているためである.この隔壁は肝被膜のつづきをなし,後者が小網の肝十二指腸部のなかで包んでいるすべての器官のづきが,やはりこの隔壁のなかにみられる.すなわち門脈の枝である小葉間静脈Venae interlobulares,肝動脈の枝である小葉間動脈枝Rami arteriosi interlobulares,胆汁をみちびく小葉間胆管Ductus biliferi interlobulares,それと神経とリンパ管である.

 門脈のごく細い枝である小葉間静脈がおのおのの小葉のまわりでごく短い側枝(図141)をだし,この側枝が多数の毛細血管をだしている.この毛細血管が小葉の辺縁部のなかで豊富に発達して網をなす.そして肝小葉の中心部の毛細血管網が各小葉の中軸を走る中心静脈Vena centralisに集合する.中心静脈には毛細血管が直接に開いていて,そこに小さい幹は形成されていない.

 比較的小さい肝小葉では中心静脈は簡単な形の1本であるが,やや大きい小葉では中心静脈が枝分れしている.--中心静脈はいわゆる集合静脈Sammelvene (その径は250µ以上)に直く.に接している肝小葉では,その接している面すなわち小葉の底Basisにおいて外に出る.しかしこれは小部分の小葉についてだけみられる関係であって,集合静脈に直ぐに接していない小葉(これがすべての小葉の半分以上を占める)では小葉の表面のどこか1個所で中心静脈がそとにでて,小葉の外でたがいに合して小さい幹となり,これが小葉間をとおつたり,あるいは他の小葉のなかを貫いてとおり,集合静脈に達するのである(Pfuhl).

 数多くの集合静脈がだんだんと相合して次第に太い肝静脈の小幹となり,これはその後の経過ではもはや集合静脈をうけとることなく,付着部の方向にむかつてすすむ.そしてここで現われでる2, 3本の太い肝静脈Venae hepaticaeが下大静脈に注ぐのである.

[図142]肝小葉の配列 (Kiernanによる)×10

 肝動脈は門脈と同じぐあいに枝分れする.その枝である小葉間動脈枝は門脈の枝である小葉間静脈に伴っているが,これよりはるかに細い.肝動脈がみちびく血液は漿膜と特にまた肝被膜,およびこの被膜のなかにある諸器官にあたえられるが,なおまた肝動脈の毛細管は門脈の毛細管系ともつづくのである.

 肝小葉の内部の毛細血管は内腔が著しく広い(9~12µ).その壁をなす内皮細胞管では内皮細胞が合胞体Synaytiumである(細胞間の境がみえない).原形質が核のまわりに比較的多く集まって,とげの出た形をしている.これをクッペル星細胞Sternzellen, Kupfferという.

 星細胞はいろいろの形であるが,たいてい長くのびて,2~3あるいはそれ以上の尖端をもっており,肝細胞よりは小さくて,小葉内のどこにも平等にみられるが,その数は多くない.これはいつも壁にすぐ接していて(Pfuhl,1927),アメーバ様の性質を示し,著明な食作用をあらわすのである.Pfuhlによればこれは内皮細胞の一部が特別に分化したものであって,赤血球・色素・脂肪そのほか血液にまじって肝臓に達した有形のものや,染色のための色素などをとりこむ.

 Zimmermann(1928)によるとクッペル星細胞(この学者はEndoayten--内皮球の意--とよんだが)は完成の域に達した肝臓では内皮細胞とは何らの関わりをもたぬものである.小葉内の毛細血管では銀染色によって細胞の境界が証明されないけれども,その内皮細胞管はやはりはっきりと境のある細胞からできているらしい.この管の内部に星細胞が独立した細胞として存在し,それは壁にぴったり付いていることもあり(図145),また毛細管の腔所に遊離して(図144),その突起をもって壁に連なっているのもある.それゆえ血液によってその細胞体の全部が洗われるのである.

Hirt(Z. Anat. Entw.,109. Bd.,1938)も生きているカエルの肝臓で星細胞が遊離していることを確かめたWolf-Heidegger(1941,1942)によると星細胞は毛細血管の内皮から由来するものであって,壁から離れてZimmermannのいう内皮球Endoaytenの状態となる.この細胞はビタミンやホルモンの出納に重大な役目をしている.

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最終更新日13/02/03

 

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