Rauber Kopsch Band2. 102   

これらの大きい胆管ではそれをとりまく結合組織がいっそう豊富に発達している.それが固有層Lamina propriaとかなり厚い外方の線維層とに分れている.太い胆管の上皮はやはり単層円柱上皮であり,その固有層には縦走および輪走の平滑筋線維がある.

 肝の迷行管Vasa aberrantia hepatlsというのは肝実質のそとにある胆管の集まった網であり,つまりそれをかこむ肝実質をもたない胆管である.これは胎児の時に一定の場所に広がって発達していだ肝実質が後にその発達が止つて退縮した,その最後の残りものなのである.迷行管のみられる所はとくに肝の前縁の左側部,下大静脈のまわり,肝門のなかである.迷行管は円柱上皮と結合組織性の被いとからなり,しぼしば黄色い顆粒性の塊りをもっている.

 胆嚢(図153, 154)の壁は腹膜で被われている所では4層もっている.すなわち1. 粘膜,これは蛍層の丈けの高い円柱上皮と,多量の弾性線維をまじえた固有層より成る.2. 筋層,これは輪走・縦走および斜走する平滑筋線維の束からできている.筋束の配列はSchreiber(Z. Anat. Entw,111 Bd.,1941)によると鋏状格子Scherengztterの形で,外層は横走し内層はずっと弱くて(外層の1/21/3)縦走しており,両層の筋束がたがいにつながり合って,1つの単位をなしている.3. 漿膜下組織.4. 漿膜

胆嚢の上皮細胞は丈けの高い円柱状で,小皮縁をもっている(Ferner 1949).そして粘液性の分泌物をだす(Sommer). 図153, 154

胆汁Fel(Bilis), Galle

 肝臓の分泌物である胆汁は始終つくられている.これはひどく苫い味をもつ中性の液で,比重は1010~1040であり,緑黄色あるいは緑褐色である.これは胆嚢のなかに集められていた胆汁とともに消化のときに十二指腸にだされる.消化のとき以外では肝臓からでてくる胆汁が胆嚢に入り,ここに貯えられて利用されるまで待つのである.肝臓からの胆汁Lebergalleはは水分に富んで明るく,胆嚢のなかの胆汁Blasengalleはいっそう暗くて,濃くて粘液に富んでいる.

 Pfuhl, W., Z. Anat. Entw, , 66, Bd.,1922;Z. Zellforsch., 4Bd.,1926;Z. Anat. Entw.,81. Bd.,1926およびZ. mikr. anat, Forsch.,10. Bd.,1927;Zimmermann, K. W., Z. mikr. . anat. Forsch.14. Bd.,1928.

膵臓Pancreas, Bauchspeicheldrüse. (図99, 113, 114, 164, 166)

 膵臓は細長い器官で灰赤色をしており,軽くS状にまがって,腹腔の後壁に付着してほとんど横の方向にのび,十二指腸から脾臓まで達している(図113, 166)

 これにCaput pancreatis,Corpus pancreatis,Cauda pancreatisが区別される.頭は幅がひろくて十二指腸に沿って一部は上方に向うが,主として下方にひろがっている.頭の後下部が鈎状にまがって,時としてここがはっきり他の部分から分れている(鈎状突起Processus uncinatus).そのためにできる溝を膵切痕Incisura pancreatlsといい,これを上腸間膜静脈がとおり,いっそう稀には同名の動脈もここを通っている.

 膵体は前面Facles ventralisと後面Facles dorsalisをもっている.膵頭の近くで前面が円みをおびた低い高まり,すなわち小網隆起Tuber omentaleをなしている.膵尾は細くなりその端が円くなっているが,少しく上方にすすんで脾門と左の腎臓と腎上体に達している.

 膵臓の重さは65~75gであり,長さは14~18cm,幅は平均して3~9cm,厚さは2~3 cmである.(日本人の膵臓の重さは平均74grである(長与又郎:膵臓ラソゲルハンス氏細胞島の発生および意義について.東京医学会雑誌20巻669~713, 741~752.1906).山田によれば男(126例)の平均75.6gr,女(89例)の平均69. 9grである(山田致知:日本人の臓器重量.医学総覧2巻14~15,1946).また長さは男16.02cm.女13.72cm;幅は男3.08cm,女2.88cm;厚さは男1.81 cm,女1.64 cmである(鈴木丈太郎:人体系統解剖学,3巻上篇,1920).)

 変異:ときどき副膵Pancreas accessoriumがみられる.これは十二指腸の上方部や胃からでていることがあり,小腸の下部にみられることもある.まれに膵頭が十二指腸の全周を輪状にとりまいている.これを“ringförmiges Pankreas”輪状膵という(Keyl, Anat. Anz., 58. Bd.,1924. )

 局所解剖:I. 全身に対する位置関係としては膵臓は上腹部の右外側部ではじまり,その内側部を横に貫いてすすみ,左外側部で終わっている.II. 骨格に対する位置関係としては膵頭は第1から第3までの腰椎体の右側にある.

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最終更新日13/02/03

 

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