Rauber Kopsch Band2. 113   

上行結腸の後面は腸骨筋膜,腹横筋膜および右の腎臓の前面の下部に接して,これらとは疎性結合組織によって結合している.

 局所解剖:I. 全身的にみると,上行結腸は中腹部の右外側部にある.II. 骨格との位置関係からいうと,上行結腸は上下にならぶ腰椎の肋骨突起と第12肋骨に当たっている.III. 近くの諸器官との関係としては,上行結腸は腰方形筋と腹横筋の上にのっており,右の腎臓の内側の下部を通りすぎて,右結腸曲をもって肝臓の右葉の内臓面に触れている.

 横行結腸Colon transversum(図159161)は上腹部を横にすすんでいて,それも中腹部の膀部の上方の境にそって横走し,軽く上方に向かって上腹部の左外側部にいたり,ここで脾臓の前端に接するところで,左結腸曲Flexura coli sinistra(s. lienalis)というつよい屈曲をなして下行結腸となる.左結腸曲は右結腸曲より上方にあり,また横隔結腸ヒダPlica phrenicocolicaによって横隔膜と結合している.

 局所解剖:I. 全身的にみると,横行結腸は上腹部と中腹部の膀部とにある.II. 骨格との位置関係は左右の第10肋軟骨の終りを結合した線にほぼ一致している.III. 近くの諸器官との関係は横行結腸が上方は肝臓・胆嚢・胃・脾臓に接し,後方は十二指腸と膵臓に,腹方は前腹壁に,また下方は小腸に接している.横行結腸間膜は腺腹Drüsenbauchと腸腹Darmbauchとの境をしている(Waldeyer).

 左右の結腸曲はずっと後方にあり,その間の中部が前腹壁に接している. Haßelwander(Z. Anat. Entw.,115. Bd.,1951)は左右の結腸曲が体位や姿勢により,また呼吸運動によって,その高さがいろいろと変ることをみている(第12胸椎から第4腰椎まで).

 変異:時として横行結腸が隣まで達し,つよくまがっているときはそれよりもなお下方で,小骨盤のなかにまで達していることがある(結腸下垂Coloptosis).上方あるいは下方へ係蹄をなしていることがある.前者の場合には係蹄の頂がしばLば横隔膜と肝臓のあいだで,ふつう肝鎌状間膜の左にある (Thorsch 1921).

 下行結腸Colon descendensは左結腸曲からはじまり,中腹部の左外側部を下行して左の腸骨窩に達し,ここではっきりした境なしにS状結腸に移行する.下行結腸は前方および側方から腹膜で被われ,後面が疎性結合組織および脂肪組織によってその下にある諸器官と結びついている(図99, 159161, 164).

 局所解剖:I. 全身的にみると,下行結腸は上二腹部と中腹部とのともに左側部にある.II. 骨格に対する位置は,下行結腸が第12肋骨と腰椎の肋骨突起と左の腸骨稜に当たっている.III. 近くの諸器官との関係では,左結腸曲が脾臓に触れており,下行結腸は左の腎臓の外側縁に接し,また腰方形筋と腹横筋の上にのっている.前方はその大部分が小腸の集りによって被われる.

 S状結腸Colon sigmoides(図99, 159161)はS. romanum(ローマ字のS)とも通称されて,腹膜に完全に被われ,腹膜のつくるひだすなわちS状結腸間膜Mesosigmoideumによって保持されている係蹄状の結腸部であって,その長さと形と位置が変化に富むのである.S状結腸はいろいろと異なるぐあいで左の腸骨窩ではじまる.それより上方であっても,S状結腸間膜が開始すれば,それとともにはじまる.その終りはS状結腸間膜の終るところ,すなわち第3仙椎の上縁までとする人があり,あるいはもっと上方で岬角の枯側までとする人もある.S状結腸間膜は左の外腸骨動静脈・左の精巣動静脈(卵巣動静脈)・左の尿管と交叉している.

 変異:S状結腸は多くは岬角の左側で小さい係蹄をなして小骨盤に下りてゆくが,他のばあいにははなはだしく右の方へまがって伸び,盲腸に達したり肝臓にまでいたることがあって,それからやっと骨盤に戻ってくるのである.下行結腸に直ぐつづいて多少の差はあるが小骨盤のなかまで下っている部分をColonschenkel(結腸脚)といい,そこからふたたび戻ってくる部分をRektumschenkel(直腸脚)といい,これらが係蹄の頂を形成している.そして岬角にまで達して,もう一度つよく簿曲した上で直腸に移行する.係蹄の頂が水平方向で右方に向いていたり,また上方に向うことさえある.

S.113   

最終更新日13/02/03

 

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