Rauber Kopsch Band2. 119   

この柱と柱のあいだにあるへこみが直腸洞Sinus rectalesであって,これはF方で最も深くなっている.

 直腸の粘膜の微細構造は大腸のそれとほとんど同じである.粘膜の表面は平滑で絨毛をもたず,単層の円柱上皮で被われ,これがはなはだ多数の杯細胞をもっている.リーベルキュン腺がいっそう密に集まっているために,直腸の粘膜固有層は大腸のそれより量が少ない.孤立リンパ小節がたくさんあり,とくにこれは直腸の初まりめ部に多い.そして直腸のリンパ小節は粘膜筋板を貫いて,粘膜下組織に達している.粘膜筋板は固有層と疎な性質の粘膜下組織とのあいだを境している.直腸柱が出現するとともに円柱上皮が次第に重層扁平上皮に移行する.後者の最も深層の細胞は色素をもっている.肛門輪の領域に(いつもとは限らないが)独立脂腺がみられる.

 直腸の血管とリンパ管.直腸の動脈は下腸間膜動脈の枝である上直腸動脈A. rectalis cranialis,内腸骨動脈からの後直腸動脈A. rectalis caudalis,内陰部動脈からの肛門動脈Aa. analesである.

 直腸の静脈は2,3の特別な点がある.直腸のまわりには直腸静脈叢Plexus rectalisというよく発達した静脈の網があり,この網からおこる静脈が一部は動脈に伴って上方にすすみ,かくして門脈の根の領域に属している.一部は内腸骨静脈にいたり,すなわち下大静脈の領域に属している.

 直腸のリンパ管と神経については,115頁で大腸に関して述べたことがここにもあてはまる.

腸液Darmsaft

 唾液腺,胃,十二指腸および十二指腸に開く大きい腺の分泌物についてはすでに述べた.ところで腸液はリーペルキュン腺の分泌物であって,それに遊走してでた白血球がまじっている.大腸からの腸液Dickdarmsaftについては研究が少ししか行われていないが,おそらくこれは消化作用を全くもたないのであろう.

腸の長さと腸の重さ

 上に述べたことから分るように消化管は1本の円筒形の管ではなくて,いろいろと異なる長さの5つの部分に区分されていて,その各部がみな終りが細く,初めが太くて,すなわちだいたいにロート状および円錐状であり,そういう形の5つの部がたがいに続いてできている.それを模型で示すと図169のようになる.

 Rolsennによると子供は成人より比較的にいっそう長い空腸-S状結腸,あるいは空腸-回腸をもっている.女は男より空腸一回腸がやや短くて,これに反して大腸がやや長い.死後硬直は腸の長さを短くし,ガスが内部にたまることにより腸は長くなる.腎臓・肝臓・腸・腹膜の慢性疾患では,腸の長さが短くなる.

[図169]消化管の5つの口ート状の部分をしめす模型図 1口腔,2咽頭と食道,3胃,4小腸,5大腸と直腸.

 M. Mühlmannは上下の腸(胃を合わせて)の重さと長さをいろいろの年令層について研究した.新生児では腸の重さが例えば142grと149 grであり,成人ではそれが1175gr~2755 grである.腸の重さの変動はだいたいに体重の変動に相当している.生涯を通じて腸は全身の量と平行して成長する.年をとって体重が減ると腸の重さもまた減り,そのパーセント関係すなわち体重の3%が腸重という関係は変らない.また腸の長さと体幹の長さの割りあいも一生の間かなり等しい値の範囲にとどまるのである.

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最終更新日13/02/03

 

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