Rauber Kopsch Band2. 124   

 赤脾髄のリンパ細胞は血液へもリンパ球を供給するのである.新しく作られたリンパ球はまずもってリンパ路に入る.おそらく一部のものは直接に毛細管性の静脈にはいってゆく.普通のリンパ球のほかに赤脾髄には同じ種類の細胞でそれよりいっそう大きいものがあり(多核のものもみられる),なお血管のそとに出た赤血球や,血球を捕えているリンパ細胞や,顆粒状の色素もある.

 脾臓の血管.腹大動脈からおこる腹腔動脈の最大の枝である脾動脈が6本あるいはそれ以上の枝に分れて脾門から入る(図171).そして脾臓の内部で速かに枝分れするが,その諸枝のあいだに吻合がない,すなわち終動脈Endarterienをなしている.マルピギー小体のなかで細い動脈が突然に多数の細い枝に分れて,それが筆毛状にみえるので,この細かく分れた部分を筆毛動脈Penicillusというのである.マルピギー小体からでてきた細い毛細管が結合組織性の特別な鞘でかこまれる.これを毛細管の莢Kapillarhülseあるいは毛細管鞘Kapillarscheide (Schweigger-Seidel)という.この毛細管が直接に毛細管性の静脈に注いでいる(図174, 177).後者から血液がいっそう太い静脈にあつまり,この静脈が脾柱とともに走って,けっきょくその全部が脾静脈に集るのである.

[図179]ヒトの脾臓の構造模型図

 毛細管の莢はヒトでは証明できないことが時どきあるくらいに発達がよわい.これは細網線維と円みをおびた多角形の細胞(莢細胞Hütsenzellen)とより成り,この細胞が毛細管に対して同心性にならんでいる(Bargmann, Z. Zellforsch., 31. Bd.,1941). これは細網細胞が変化したものである.多くの学者はこの莢の系統を血液の循環に対する安全弁の装置とみなしている(Watzka, Z. mikr.-anat. Forsch., 43. Bd.,1938).

 赤脾髄の静脈性毛細管はその腔所がはなはだ広くて(80~150µ),壁がごく薄い.その壁は特別な形をした内皮細胞のただ1層からなり,この内皮細胞の列が周囲のリンパ性組織の線維によって管の形にまとめられているのである.おのおのの内皮細胞は細長くのびて,両端がとがった棒の形をしている(杵状細胞Stabzellen),その核は細胞の全長のおよそ中央にあって(図175),そこで細胞体を血管の内腔にむかつて強くもり上げている.杆状細胞には中央部に比較的密な1本のすじがあり,側方部に2本の縦のすじがある.あい隣る杆状細胞の側方のすじがたがいに接触しているが,しかしそれらの間に大小いろいろの口や,かなり大きい隙間のあることが多い.

S.124   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る