Rauber Kopsch Band2. 125   

 内皮細胞は桶の板のようにたがいに平行してならび,その長軸は血管の縦の方向と一致している.そして外側から輪状に(桶に箍をはめたように,faßreifenartia)リンパ性組織の線維によってとりまかれて支えられている(図178).またこの輪状線維は内皮細胞の外面にある溝のなかにある.この線維がたがいに結合しており,またリンパ性組織の細網線維ともつながっている.毛細管性の静脈の内皮細胞は食作用が著しくて,血液から赤血球をとりこむといわれている.脾臓内の血液循環は上に述べたところによれば“閉鎖された路”geschlossene Bahnenで行なわれている(ThomaとHelly).この閉鎖路の説はE. von Herrathが電子顕微鏡を用いて杆状細胞のあいだに膜の存在を証明したことによって,大いに根拠を固くしたのである(Verh. D. Ges. Path.1953).

 脾臓のリンパ管は浅層すなわち漿膜下と深部とに広がっている.深部のリンパ管は浅層のものとつづきながら動脈に伴って走り,後胃間膜の胃脾部にそってすすみ,リンパ節に達する.

 脾臓の神経は大部分が無髄であって,腹腔神経叢からきて動脈とともに脾臓の内部に入る.そして血管のまわりをとりまき,また脾柱のなかで細かい網をなしている.これから枝が赤脾髄にも白脾髄にもでて,そこで自由終末をしている.

 脾臓の大きさの変化は一部は周期的におこる.たとえば消化に際しておこる.そのほか大きさの変化がみられるのは病気のときであって,時として脾臓がひじょうに大きくなって,肝臓の大きさに近づいたり,また肝臓をしのぐことがある.脾臓の位置もまた変ることがあって,その場合には遊走脾Wandermilzenとよばれる.

 脾臓の機能的意義については次のごとく言うことができる.これは白血球の作られるだいじな場所である.血球を数えてみると,脾静脈の血液は動脈血とくらべて白血球にいっそう富んでいる.また脾臓では多数の赤血球が死滅する.年とった動物の脾臓が高い鉄含有量を示すのはその現われである.しかし最大の意義は脾臓がよく拡大する性質をもっていて,血液の循環を遅くすることである.血流をおくらせることは毛細管性の静脈においておこる.脾臓の拡張性のためにこの器官は血液の貯蔵所であり,生活体の安全弁となっている.血管の緊張が高度のときは,脾臓が大きく膨れて血管内の圧の一部が減らされて,心臓と血管系は荷重を軽くすることができる.循環がおそくなることは解剖学的にはなはだたやすく説明できる.血液は広さが8~10µしかない動脈性毛細管から80~150µの広さの静脈性の毛細管に入るのである.これは血流にとっては急な流れの小川が沼に注ぐようなものである.

血液は毛細管性の静脈のなかでひじょうにゆるやかに流れる.そのために白血球はその作用を発揮する機会があたえられる.何となれば白血球は急な血流のなかでは刺激状態にあって球形を呈するが,ゆるやかな流れのなかでは落ち着いて,偽足をのばし,食作用をいとなみ,そのほか生活体の保護に役だついろいろな性能をあらわすことができる.

 von Herrath(Verh. anat. Ges.,1938 und 1939)は多くの動物の脾臓をしらべて貯蔵型Speichertypと防衛型.Abwehrtypとそれらの中間の型を区別した.貯蔵型はウマ・食肉類・反芻類がそれに属し,脾柱がつよく発達しており,防衛型は齧歯類がその例で脾柱の発達がよわい.--Hellman, F., Die Altersanatomie der menschlichen Milz. Z. Konstitutionslehre,12. Bdr,1926.

II.呼吸器系Systema respiratorium, AtmungsSystem

呼吸の概念

 呼吸Respiration, Atmungとは生きている動物が酸素を取り入れ,炭素ガスを送り出すことである.この働きに関与している器官を呼吸器Respirationsorgane, Atmungsorganeという.

 多くの下等動物は呼吸器というものを特にもたないで,そのかわりに体ぜんたいで呼吸している.たとえばアメーバがそうである.このようなものが呼吸の第1の形で体呼吸Körperatmungという.後生動物Metazoenの大部分は皮膚全体で呼吸している.これを皮膚呼吸Hautatmungといい,それに対して腸呼吸Darmatmungもやはり広い範囲にみられる形である.動物体がもっと高等になると特別な呼吸器が現われてくる.このばあいでも皮膚呼吸と腸呼吸が大きな役割を演じていることがある.特別な器官を備えた呼吸の1つの形として鰓呼吸Kiemenatmungがある.また第2の形として水肺Wasserlungeによる呼吸がある.第3には空気肺Luftlungeによるものがあり,第4には気管系Tracheensystemeによる呼吸がある.

 Kiemenは皮膚または粘膜の表面が広がってもり上つてできた繊細なもので,いろいろな形をしていて,血管が豊富に分布している.鰓は体から露出しているか,あるいは鰓腔Kiemenhöhleという体内の場所に閉じこめられている.この鰓鰓が外界とつながっている.普通は特別な装置があって,この鰓所の水流を適当に調節している.

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最終更新日13/02/03

 

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