Rauber Kopsch Band2. 130   

 鋤鼻器(ヤコブソン器官)Organon vomeronasale(Jacobsoni)は人では痕跡器官である.これは切歯管Ductus incisivi,および硬口蓋の切歯乳頭Papilla incisivaと密接な関係にある.

 切歯管(右と左の)は骨の切歯管Canalis incisivusを通って鼻腔底から口蓋に達する.切歯管が通過可能であることは例外的であって,そのときは切歯乳頭に開口している.切歯乳頭には成人において大麦の粒,ないし扁豆の形をした軟骨の核があることがまれでない.乳頭の基礎をなしている結合組織には多数の神経の枝や血管があり,また触覚小体がみられる Peter, K., Anat. Anz., 46. Bd.,1914.

 人のヤコブソン器官Jacobsonisches Organは短い行きづまりの管で,中隔板の前下端のそばで各側ともごく小さい1つの開口をもってはじまり,中隔板に沿って後方にのびる.管の外側壁には鼻腔の呼吸部の上皮が続き,内側壁には嗅部によく似た上皮がある.詳細についてはさらに132頁と感覚器の項を参照されたい.

II.鼻腔Cavum nasi

鼻粘膜の小部分は嗅覚器に属するので,その粘膜は本質的に異なる2つの部分,すなわち呼吸部Regio resplratorlaと嗅部Reglo olfactorlaからできている.

 鼻腔には主三鼻腔が2つと,それに副鼻腔が付属している.

a)左右の主鼻腔(図82, 84, 182)

 鼻腔は右と左にあり,鼻中隔Septum nasi, Nasenscheidewandがその互いの境となっている.したがって鼻中隔は左右の註鼻腔の内側壁でもある.鼻中隔には骨部Pars osseaと軟骨部Pars cartilaginea,および皮部Pars cutaneaが区別される.鼻腔の上壁は篩板の下面と蝶形骨の下面とを被う粘膜からできている.下壁は硬口蓋と軟口蓋の上面の粘膜で区切られている.また前壁は外鼻の屋根のところにあたっており,その下面には外鼻孔Nares, Nasenlocherがある.後壁の上部は蝶形骨体の前壁からなり,下部は開いていて後鼻孔Choanaがある.鼻甲介と副鼻腔の存在によって外側壁は特別な形を数多く示している(図82).

 左右の主鼻腔の前下部を鼻前庭Vestibulum nasi, Vorhofといい,ここは可動性である鼻翼の内側になっている.この動かしうる鼻前庭において皮膚が粘膜に移行する.外側壁に鼻限Limen nasiという強い隆起があって,前庭と鼻腔内部との境をなしている.外鼻孔をかこむ下部,特にその外側壁には(また内側壁にも)鼻毛Vibrlssaeという短くてかたい毛が生えていて,格子のようになって入ロを守り,異物が進入するのを防いでいる(図82).

 外側壁(図82)には下鼻[甲]介,中鼻[甲]介,上鼻[甲]介Concha nasalls inferior, media, superiorという3つの鼻甲介が上下に並び,またいくらか前後の方向にもなっている.なおそのほかに新生児では常に,成人ではそれよりまれに最上鼻[]Concha nasalls supremaがみられる.

 上鼻甲介と中鼻甲介のあいだに上鼻道Meatus nasi superiorがある.中鼻甲介と下鼻甲介および鼻腔の外側壁とのあいだを中鼻道Meatus nasi mediusといい,その前方に中鼻道前房Atnum meatus nasl medi1がある.また下鼻甲介の下方と側方を占めるのが下鼻道Meatus nasi inferiorである.

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最終更新日13/02/03

 

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