Rauber Kopsch Band2. 134   

III.喉頭Larynx, Kehlkopf

 喉頭は頚の前上部で第3ないし第6頚椎の高さにあり,男では正中部に喉頭隆起Prominentia laryngiicaという突出部を作っている.これは俗にアダムのリンゴAdamsapfelと呼ばれる.

 喉頭の上部は三角錐の形をていし,下部は円柱形にかなり近い形となって気管に続いている.

 喉頭はいくつかの軟骨でできた骨組みをもっている.これらの軟骨は靱帯によって可動的に連結されている.そのほかに筋も存在し,これが軟骨を相互に動かし,それによって各部の形や緊張度がいろいろと変化する.喉頭腔は粘膜で被われている.この粘膜は咽頭の粘膜に続き,また2対のひだを作っている.下のひだが声帯ヒダで,音声を作ることに直接に関与している.発声器官としての喉頭の機能は,これが呼吸に関与するために必要なものよりもはるかに複雑な構造を生ぜしめているのである.

 局所解剖:喉頭の後方には咽頭の喉頭部があり,両側には総頚動脈がある.甲状腺の左右両葉は喉頭の両側面で喉頭と総頚動脈のあいだに伸びだしている.それが喉頭の上縁にまで達していることすらある.前方は舌骨下筋群およびこの部分の浅頚筋膜と中頚筋膜とによって被われているが,中央部は筋で被われていない.上方は舌骨と舌に接している(図76, 77, 84, 86).

 骨格との関係:頚椎の前方で第3頚椎体の上縁から第6頚椎体の下縁までの間にある.女と子供ではもっと上方にあり,老人ではもっと下方にある.

 年令差:喉頭は生後3年目まではかなり著しく大きくなる.その後の成長は性的に成熟する時期まで男女とも非常にゆっくりしている.性的に成熟する時期になると成長は急速になり,1年間のあいだに男の喉頭の声門の長さは以前の2倍に達し,女では1倍半となる.

 男女の差:完成した男の喉頭は前方の高さが7cm,最大幅4cm,甲状軟骨下縁での深さ(前後径)3cmである.女の喉頭はそれぞれ4.8cm,3.5cm,2.4cmの価である.男の声門裂の長さは平均2.5cm,女では1.5cmである(Luschka).(日本人の喉頭の高さは平均男4.1cm,女3. 3cm,声門裂の長さは男2.0cm,女1.5cmである(尾関才吉,東京医会誌25巻17号,1911).)

 人種の差は多少ながらみられる.Grabert, Z. Morph. Anthrop.,1913;Waldeyer, A., 同誌, 26. Bd.,1926を参照のこと.

a)喉頭の骨組み
喉頭軟骨Cartilagines laryngis

1. 甲状軟骨Cartilago thyreoides, Schildknorpel(図183, 184)

 甲状軟骨は喉頭軟骨のなかでもっとも大きく,右板左板Laminae dextra et sinistraという板状あるいは翼状をした2枚の部分からなっていて,この2枚の板が正中線のところで多少の差はあるがと忙かく鋭い角をなしてたがいに合している.

 左右の板はだいたい四辺形をしている.その前縁がいちばん短く,後縁は自由縁で厚くて,円みをおびており,上方と下方に棒状の突起を出している.この突起を上角および下角Cornua hyoideum et cricoideumという.上角の方が長くて上後方かつ内側に向う.下角はそれより短いが太くて前方かつ内側に向かっている.下角の内面には小さい関節面がある.

 甲状軟骨の上縁は左右ともS字状に曲がっており,中央に上甲状切痕Incisura thyreoidea cranialisという切れこみを作っている.上縁は上甲状切痕のところで上方に凸の弧を画いてはじまり,上角のところで下方に向かってへこんだ曲線を画いて終わっている.下縁は中央がくぼんでいて,ここを下甲状切痕Incisura thyreoidea caudalis という.

S.134   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る