歴史的な偉大な解剖学書
喉頭には頚部の筋と咽頭筋のところですでに記載した喉頭に働きかける外部からの諸筋のほかに,なおいくつかの喉頭に固有な筋がある.これらは喉頭の諸軟骨の間に張るものである.
短くて強い筋で,左右とも輪状軟骨の弓において正中線のすぐそばから広い起始をもってはじまり,外側かつ上方にすすんで甲状軟骨の下縁とその下角の内方縁に付着している.
この筋の前部は甲状軟骨の下甲状結節のところで,この筋の後部からかなりはっきりと境いされている.後部はほぼ横の方向に走るのである.したがって前部を直部Pars recta,後部を斜部Pars obliquaという.表層のいくらかの線維が喉頭咽頭筋に移行していることがはなはだ多い.
この筋は輪状軟骨の板の後面にある左右のくぼみから起り,外側かつ上方にすすんで披裂軟骨の筋突起に付着する.
ときおりこの筋から1本の筋束が別れて,甲状軟骨の下角の後方で輪状軟骨の上縁から起り,外側かつ上方にすすんで下角にいたる.これを下角輪状筋M. ceratocricoideusという.また下角から小さい筋が出て主筋に接してすすみ,筋突起に達していることがある(下角披裂筋M. ceratoarytaenoideus).
これは斜部Pars obliquaと横部Pars transversaとからなっている.横部は披裂軟骨の後面の下部とその瀾節の上を横に広がっており,披裂軟骨の外側縁に付着する.やや長めの四辺形の筋であって,輪状軟骨の板の上縁の上にのっている.
斜部は細い筋束で横部の後面にのっており,筋突起から起こって斜めに走って,他側の披裂軟骨の上部に向かっている.したがって他側の同名筋と交叉する.若干の筋束は披裂軟骨を廻って前上方にすすみ,喉頭蓋軟骨の側縁のところでみえなくなる.これを披裂喉頭蓋筋M. aryepiglotticusという.
この筋の一部が下方にすすんで甲状軟骨の角に着いていることが非常に多いので,この筋の全体を甲状披裂喉頭蓋筋M. thyreoaryepiglotticusとも呼んでいる.
この筋は輪状軟骨の上縁と側方部の外面から始まり,斜めに後上方にすすんで披裂軟骨の筋突起に付着している.
この筋は前方は甲状軟骨の内面から起り,後方かつ外側にすすんで披裂軟骨にいたる.下方の部分がいっそう強大であり,上方の部分はそれより弱い.下方の部分が外側部pars lateralisと声帯部Pars vocalisの2つに不完全ながら分れていることがある.声帯部は声帯ヒダのなかにあるから声帯筋M. vocalisとも呼ばれる.
声帯部は甲状軟骨から披裂軟骨の楕円窩に達している.
室ヒダのなかにふくまれている弱い筋束が以前には室ヒダ筋M. ventricularisと呼ばれた.
最終更新日13/02/03