Rauber Kopsch Band2. 148   

中央部に向かっていくぶん太くなっている(上下の両端に近づくと比較的細い).男は一般に女より太い.前方と側方は円筒形をしていて固くて丈夫であり,その壁のなかに気管軟骨という弓状の軟骨がふくまれている.この弓状の軟骨は後方が開いたままであって,すなわち気管の壁の後部は軟骨の基礎をもたないのである.したがってこの部分は膜様で平らである.この部分を膜性壁Parles membranaceusという.

 局所解剖(図223, 224, 226):気管の後がわには食道があって膜性壁を少し押しだしたかっこうをしている(図88).食道は気管の頚部では気管の左縁を外側に越えていて,もっと下では左の気管支と交叉している.第2から第5までの気管軟骨の前方には甲状腺の峡がある.甲状腺の左右両葉は気管の上部の側面を包んでいる.

[図203]気管とその分枝(死体)

 横隔膜は空気で充された肺によって下方に押しやられている.レントゲン写真.背位(Haßelwanderによる)

[図203a]気管分枝の模型図 区域気管支Sementbronchenの名前は1949年ロンドンにおいて決定した名称による(Dennig, Lehrb. mn. Med., Thieme Stuttgart,1954より).

甲状腺が錐体葉をもっているさいには,これが気管の上部の上を越えて,たいてい喉頭の左側の面上を正中線に沿って上方にいたる.子供では胸骨と気管のあいだによく発達した胸腺がひろがっている.両側の胸骨舌骨筋と胸骨甲状筋が気管の前面を被っている.しかし左右の胸骨甲状筋のあいだに狭くて長い菱形の空所が残っていて,そこでは気管を被うものは頚筋膜だけである.そのほか最下甲状腺静脈が気管の前を走っている(図223).気管分岐部の上方で左腕頭静脈,腕頭動脈,左総頚動脈が気管の上を通り過ぎる.もっと上方では左右の総頚動脈が気管に沿っている.気管と食道のあいだの溝で,左側の溝のなかを下喉頭神経が通る.気管は左右の胸膜嚢にはさまれて縦隔の前部と後部の境のところにある.そのさい脊柱の弯曲に沿っていくぶん後方にすすんでいる.

右と左の気管支Bronchus dexter et Bronchus slnister, rechter und linker Luftröhrenast

 右と左の気管支は下方に向かって開く角度がほぼ直角をなして気管から発する.それぞれ相当する肺に向かって外側かつ下方におもむく途中において,その長さや幅はもとより,そのすすむ方向も,隣接する器官との関係もかなりに大きく左右のあいだで違っている.

 右気管支は左気管支より短いが,いっそう太い(図202, 204).だいたい3cmの長さであって,いっそう急な傾斜をもって下方に走って右の肺門に達している.

S.148   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る