Rauber Kopsch Band2. 149   

右縦胸静脈は後方から右気管支の上を越えてすすみ,上大静脈に開口する.肺動脈の右枝は初め右気管支の下にあるが,のちにはその前方にくる(図210, 212, 224).

 左気管支は右気管支よりも細くて,いっそう長く,4~5cmの長さである.外側F方にすすんで大動脈弓の下をへて左肺にいたり,右気管支が右肺の肺門に達するところよりも2.5cm低いところで左肺の肺門に達している.左気管支は食道と下行大動脈の前方を走るが,大動脈弓は左気管支の上方を通って左後方にすすんでいる(図210, 212, 226).(わかりやすく言うと,大動脈弓は左気管支の上にまたがり,右縦胸静脈は右気管女の上をまたいでいる.(原著者))大動脈弓と左気管支のあいだには左の反回神経がある(図88).

 左右の気管支はその形についてみると気管をより小さく縮めたようなものである.前方と側方が円みをもって高まって固く,弓状の軟骨(後方で開いている)によって支えられている.それゆえ後方は平らで膜性である(図204, 212)

気管の構成

 気管は気管軟骨からなる弾力をもった骨組みと,結合組織層と筋層,および腺を有する粘膜からできている.

a)気管軟骨Cartilagines tracheales.硝子軟骨でできていて,これは16~22個存在する(図202, 204).これらの軟骨は円周の2/3よりやや大きいくらいの弧を画いており,後方は鋭い縁をもって終わっている.幅は3~4mm厚さは1.0~1.5mmある.外面は平らであるが内面は丸くたかまっており,上下の縁が鋭くなっている.気管軟骨は軟骨膜で被われており,かつ強靱結合組織によってたがいにしっかりと連なっている.

 第1気管軟骨はたいていそれ以下のものより幅が広くて,その端がしばしば分れている.ときには輪状軟骨あるいは第2気管軟骨といろいろな範囲で融合している.いちばん最後の気管軟骨は気管分岐部に応じた特有な形をしている.すなわちト縁は中央のところが下方に突出し, それとともに後方にまがっている.したがって左右の気管支にはさまれた弓状の突起をもっているわげである.そのすぐ上方にある気管軟骨は中央部が幅広くなっている.気管軟骨の端は短い2つの枝に分れていることが少なくない.そのさいたいていその次にある気管軟骨のそれき反対側の端も分れていて,それ以下の軟骨の並び方はふたたび平行になる.ときどぎ隣接する2っの軟骨の端が合同している.

b)筋層.これは平滑筋の層である.気管軟骨をもっている気管の前部は筋層を欠くが,膜性壁にはこれが存在している(図204).筋層は気管軟骨の後端から始まっていま1つの後端に終る.

 縦走するまばらな筋束が筋層の外に重なっていて,これが食道の壁ともつながっていることがある.これを気管食道筋M. tracheooesophagicusという.

 粘膜と粘膜下組織(図204207).粘膜は多列線毛上皮で被われており,この上皮は鼻腔や喉頭のものとほとんど区別できない.線毛上皮細胞のあいだには多数の杯細胞がある.上皮の下には厚くて明るい基礎膜が存在する(第1巻47図).それにつづいて細胞に富みほとんど純粋に弾性組織の性質をもつ固有層がある.ここで線維は縦の方向に走っている.粘膜下組織は強い結合組織の束からできている.ここには多数の気管腺Glandulae trachealesがある.そのうち比較的大きなものは気管の軟骨部では平らな腺体を有していて,気管軟骨のあいだの場所にひろがっている.膜性壁にも多数の腺があって,その開口部は肉眼でも見ることができる.これらの腺は一部は漿液性であり,一部は混合性である.気管の混合腺は管状胞状腺の形をしていて,ジアヌッチ半月Gianuzzische Halbmondeをもっている.

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最終更新日13/02/03

 

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