Rauber Kopsch Band2. 154   

 左右の肺はまん中で縦に2分した円錐の形をしていて底面を下方に向けており,内側面はくりぬかれたようにへこんでいる.底面すなわち肺底Basis pulmonisは横隔面Facles diaphrgmaticaをもって横隔膜の上にのっている.肺底は凹面をなし,そのまがりはそれぞれの側で横隔膜の円蓋の突出した形にぴったりと一致している.また肺底の外縁は凸弯をしめしており内縁は凹弯をしめしている.肺底の鋭い縁は下縁Margo diaphragmaticusとよばれる.肺の先端Spitzeは肺尖Apex pulmonisといい,円くなっている.これは左右とも第1肋骨が傾いているために,第1肋骨の縁を越えて下頚部の前部と側方部のなかにつきでていて,しかも後方は第1肋骨の頚,つまり脊柱についていうと第7頚椎の棘突起の高さまで達している.肺尖は第1肋骨の前部からほぼ4~5cm,鎖骨からは2~3cm上方に突出している.肺尖のところを越えて鎖骨下動脈が走り,そこに鎖骨下動脈溝Sulcus a. subclaviaeという浅いへこみを生じている.また第1肋骨のために1肋骨圧痕Impressio costae primaeができている.

 肋骨に向い合った肺の面は肋骨面Facles costalisといって凸面をなしており,はなはだ広くて,前方で内側面すなわち縦隔面Facles mediastinalisに移るところが前縁Margo sternalisという鋭い縁を作っている.縦隔面はへこんでいて,その大部分が心膜嚢の弯曲に一致している.心臓および心膜嚢によるくぼみを心圧痕impressio cardiacaという(図208, 209).これは左肺のほうが深くなっている.左肺の前縁には心圧痕につついた切れこみがあり,これを心切痕Incisura cardiacaという.これをとりかこんでいる稜線の下方の角がときどきかなり長くなっていて,左肺の小舌Lingula pulmonis sinistriとよばれる.内側面において肺の中央よりやや上方で後面に比較的近いところは,気管支と肺の脈管が出入する場所であって,これらのものが肺の柄のようになっている.かくして肺根Radix pulmonis, Lungenwurzelができている(図210, 212).肺根は縦隔肺ヒダPlica mediastinopulmonalisをなして下方にのび,これは前額面の方向にのびる三角形の板となって肺と縦隔とをつないでいる.その出入個所は胸膜によって被われていないのであって,肺門Hilus pulmonisとよばれる.左肺は肋骨面と縦隔面とが後方で移行する所(図208)に大動脈溝Sulcus aorticusという縦の溝をもっている.これは下行する胸大動脈の走行に一致している.右肺には(図209)同じような縦走するへこみが2本あり,上部にあるものを上大静脈溝Sulcus venae cavae cranialis,下部のものを食道溝Sulcus oesophagicus という.

2. 肺葉Lobi pulmonum, Lappen der Lungen(図208210, 212, 223)

 左右の肺にはそれぞれ葉間裂Fissura interlobarisという長くて深い裂け目があって,各肺を前上の部分と後下の部分とに分けている.葉間裂は後上方は内側面で肺尖から7~8cm離れたところで始まり,外側面上を斜め下方へ向かって肺底の前部にいたり,さらにそこをへて内側下面に達し,ふたたび肺根のところにきて終わっている.肺の葉間裂から上の部分を上葉Lobus ventrocranialis, Oberlappenといい,それより下方にある部分よりも小さくて斜めに切り取られた半円錐の形をしている.一方下葉Lobus dorsocaudalis, Unterlappenは上葉より大きくて,むしろ四角形に近い右肺にはなお[右肺の]副裂Fissura accessoria pulmonis dextri, Nebenspalteがある.副裂は葉間裂の外側部から出て,ほとんど横の方向にすすんで胸骨縁にいたり,こうして中葉Lobus mediusという第3の小さい肺葉が区切られている.中葉は上下の大きい肺葉にはさまれたクサビ形の部分である.葉間裂に面している肺葉面を葉間接触面Facles contactus Ioborumという.各肺葉は結合組織によってたがいにしっかりつながる多数の肺小葉Lobuli pulmonis, Läppchenからなりたっている.各小葉の境は肺の表面では多角形の区画を示している.その個々の区画は5~12mmないしそれ以上の直径をもつのである(図210).

 左右の肺のあいだには上に述べた相違のほかになお若干の違いがある.右肺は左肺に比べて短くて(大きな肝臓と隣り合せているために)幅が広く,左肺は心臓が左によっているために幅がせまいのである.

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最終更新日13/02/03

 

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