Rauber Kopsch Band2. 159   

 気管支枝を動脈上のものと動脈下のものとに分けることは局所解剖学的に意味があるだけで形態学的には意義がない.それゆえこの区別を高く詳価する向きもあるが,このことから形態学的な理論づけをするのは正しくない.

 Heissは気管支の幹という概念を否定している.彼の説によると気管は右と左の気管支に分れて,右の気管支からは3本の肺葉気管支 Lappenbronchus,すなわち上・中・下肺葉気管支Bronchus lobaris superior, medius, inferiorが出る.また左の気管支からは2本,すなわち上・下肺葉気管支Bronchus lobaris superior, inferiorが出て,それぞれ相当する肺葉にいたる.これらの肺葉気管支はそれぞれの肺葉の中で枝分れしており,しかも個人個人についてちがった様式を示している.しかしいくつかの定まった基本型があってその型からいろいろな種類の分枝の形がみちびかれるのである.Heiss, Robert, Arch. Anat. u. Phys.1919.

[図215]生体の肺 レントゲン像,血管が明かにみえる.

 気管支から前と後に出る枝がさらに分れて細い枝になると,二叉分岐dichotomische Teilungの形をとっている(Justesen).直径0.8~1 mmの細い枝は細気管支Bronchuliと呼ばれ,それぞれ1つの肺小葉に分布している.細気管支は肺小葉気管支Läppchenbronchenといわれる.これは肺小葉の中でさらに枝分れして,最後に呼吸細気管支Bronchuli respiratoriiとなり,それに肺胞Alveoli pulmonisからなる肺胞管Ductuli alveolaresが続いている(図4B, 213, 218).

5. 肺の微細構造

 左右の肺は大きな複合胞状管状腺である.その導管は気管支であり,腺体は肺胞をもつ肺胞管である.

 気管支にはすでに気管において述べたと同じ成分が含まれている.すなわち線毛細胞と杯細胞の混じた上皮が基礎膜の上にあり,それに弾性線維と細胞に富み気管支リンパ小節Lymphonoduli bronchalesをもった固有層,ついで平滑筋線維からなる輪走線維層,粘膜下組織,気管支腺Glandulae bronchales,小さい軟骨,かなり太い神経の幹,および栄養する血管がある.

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最終更新日13/02/03

 

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