Rauber Kopsch Band2. 160   

 しかしながら次のことを注意すべきである.すなわち太さが減ずるとともにすべての部分がより小さくなり,上に述べたものの多くが順次にその壁から消失していく.多列上皮はだんだんと1層の線毛上皮となり,上皮細胞がもはや円柱だとはいえなくなる.軟骨についても気管や気管支の幹にみるものと違って不規則な形となり,無秩序に配列された軟骨板となる.これは次第に小さくなって肺小葉気管支では全くなくなってしまう(図221).気管支腺も漸次に数と大きさが減じ,同じく肺小葉気管支ではなくなってしまう.しかし平滑筋はもっとも細い気管支の枝にいたるまで存在し,呼吸細気管支にいたってもなお残存している.気管支の太さとの比例からいうと,平滑筋は太い気管支の枝よりも細い枝においておそらくいっそうよく発達しているのである.

[図216]呼吸細気管支の上皮 ヒト,細気管支の縦断向かって左が肺胞管につづく.

 (Clara, M., Z. mikr-anat. Forsch., 41. Bd.,1937)

 気管支壁には特に注目すべきいくつかの特性がある.比較的太い気管支の枝はその内腔が常に開いているが,中くらいないし細い方の枝では輪走筋のために締めつけられて,内腔は星状をていし,粘膜と固有層がしわを作っている(図221).固有層の弾性線維はほとんどみな縦の方向に走っている.中等大ないし細い枝では筋層は独立した内方の1層をなしている(図221).軟骨はこの筋層の外側にあり,中等大の枝ではこれらの両層のあいだに脈管や腺やリンパ節がある(v. Hayek, Ber. phys-med. Ges. NF., 64. Bd. ).気管支の枝は肺小葉気管支にいたるまでは1側に肺動脈の1枝を,他側に肺静脈の1枝を伴なっている.気管支リンパ節は特に気管支の枝分れするところにある.

 一つの肺小葉に所属する肺小葉気管支はその小葉のなかでかなり多数の細気管支に分れる.これらの細気管支は初めは薄い基礎膜の上にある丈の低い線毛上皮と固有層,および比較的よく発達している輪走筋層,それに粘膜下組織をもっている.そして肺胞管に移行する少し前に上皮の性質が変る.ここの上皮には線毛を失なった丈の低い細胞が群をなして集まっている(図216).これらの細胞の間には小さいウロコのような薄い板があって,これが肺胞のいわゆる呼吸上皮respiratorisches Epithelである.さらにこの細い枝の壁に半球形の壁龕つまりくぼみがある.これを肺胞Alveolenといい,肺胞管がもつ肺胞と同じものである.これらの点からして気管支のごく細い枝を呼吸細気管支Bronchuli respiratorliというのである(図218).

 呼吸細気管支はさらに二叉分岐をくりかえして,いっそう広い空所をもつ肺胞管Ductuli alveolaresに移行しており,肺胞管はその周りを2次的のくぼみである肺胞Alveoli pulmonisがすっかりとりまいている(図213, 218).

 肺胞は収縮した新鮮な肺ではFI]形ないし長円形である.ふくらんでいる肺では平らになるために円みをおびた多角形である.肺胞の大きさは0.15~0.35mmの間である.しかしその2倍から3倍に広がっても,破裂することがなくて,またもとの状態に戻ることができる.

S.160   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る