Rauber Kopsch Band2. 161   

隣接する肺胞のあいだには肺胞管の内腔に向かって堤状に突出するものがあり,これを肺胞間中隔Septa interalveolaria, Alveolensepta という.肺胞の存在するところはすべて肺の呼吸部respiratorische Teileで,その目的にかなった概造をもっている.

 一つの肺がもつ肺胞の数はH. Marcus(Morph. Jahrb., 59. Bd.,1928)によって4億4千4百万,呼吸表面積は50qmであると計算された.

 内腔に向かっている肺胞面はいわゆる呼吸上皮respiratorisches Epithelであって,これは明るくて薄くて大きくて核を持つていないが,もともと有核の上皮細胞から生じたものである(図214, 217).この無核板のあいだには細かい粒子をもった小さくて暗い有核上皮細胞が孤立して,あるいは群をなして存在する.この細胞は肺胞をとりまく毛細血管の密な網の隙間のところにあり,肺胞間中隔を貫いて隣の肺胞にまで達している(v. Hayek, Anat. Anz.,93. Bd.,1942).この細胞は丈の低い円柱状ないし丈の高い稜柱状をしている.上皮の外側では肺胞の壁は明るくてほとんど無構造の基礎層があり,これは厚いところでは明かに線維性の構造を示し,そこには結合組織細胞の卵円形の核と多数の弾性線維とがある.肺胞の中隔では弾性線維が輪状に配列していて,その輪から細かい線維が放射状にあらゆる方向に出ていて肺胞壁を支えている.肺胞管の初まりのところでも弾性線維が輪状にとりまいている.以前には平滑筋は肺胞管には存在しないといわれていたが,近年の研究によるとこれは肺胞管の初めめ部にあって肺胞への入口を輪状にとりまいている(Baltisberger, Z, Anat., 61. Bd.,1921による).

[図217]呼吸上皮 (ネコの肺) 細胞の境は鍍銀法であらわされている.

 多くの学者たちが1925年いらい肺胞は上皮で隙間なく被われているかどうかということを疑つている.Brodersen(Z. mikr.-anat. Forsch., 32. Bd.,1933)によると胎児時代にあった上皮がなくなるので結合組織が裸のままで肺胞の空気にさらされでいるという.しかしClara(Z. mikr.-anat. Forsch., 40. Bd.,1936)によると上皮から生じたものは被蓋細胞(Epicyten)となって毛細管の網の目に相当するくぼみの中に残存しているという.この細胞は多くはその場所に1個ずつ孤立しているが,2個ないし3個が集まっていることもあり(図219),そしてそのわずかな一部分だけがすく憐接する毛細管の壁の上にのびている.Claraによると毛細管の結合組織の壁も肺胞の表面に露出していて空気に触れているという.以前からそこを被っているといわれていた無核板が実際には見あたらないからであるという (なおBargmann, W., Z. Zellforsch., 23. Bd.,1935参照). v. Hayekによると(Anat. Anz.,93. Bd.,1942)毛細管の網の目のなかにある上皮細胞は肺胞の表面に接している毛細管の壁の上に幅のせまい突起,または帯状の突起を出しているだけだという.しかし(ラッテの肺についての)電子顕微鏡による研究では肺胞膜Alveolar membranがあって肺の組織を外気から遮断しているという (Clemens, Z. Zellforsch.1954).肺胞の上皮細胞の全体積,すなわち“肺胞上皮器官Alveolarepithelorgan”をv. Hayekは150ccmと計算している.この値はおよそ脾臓の体積に相当する.この細胞塊が血液の通路を通って肺に達した脂肪をとりあげて貯え,かつこれを変化させる.

 肺胞の小孔Alveolenporen:健康な肺でも肺胞間中隔に円みをおびた,あるいは卵円形の穴があり,これが相隣る肺胞の間をつないでいる(Hansemann 1895, Merkel 1902).同様な穴は別々の肺胞管に属する肺胞のあいだにも存在する.こρようなつながりが正常にあるかどうかについて論争がなされた(Ebner, Miller, Oppel).

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最終更新日13/02/03

 

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