Rauber Kopsch Band2. 167   

気管分岐部は成人では平均して第5胸椎の高さにある.老人では第7胸椎の高さにあることがある.肺の下縁は老人では若い人よりも1ないし2肋間隙だけ下方にある(E. Mehnert,1901). H. v. Hayek, die menschliche Lunge. Berlin 1953.

甲状腺Glandula thyreoidea, Schilddrüse

 甲状腺は上方に向かってひろがっている2つの側方部,すなわち右葉左葉Lobus dexter et sinisterからなっていて,これらは[甲状腺]Isthmus glandulae thyreoideaeという幅のせまい中間部でたがいにつながっている.甲状腺の前面と側方面は凸であって,気管と喉頭のところで長めで円みのある高まりを生じている.後面は気管と喉頭に接していてそれに相当して凹面をなしている.

[図225]上下の上皮小体Glandulae parathyreoideae craniales et caudales後方からみたところ.

 舌骨下筋群は甲状腺を不完全に被っている.頚筋膜の中葉は甲状腺の表てを通る.甲状腺は多くの場合,ずつつと後方までのびて咽頭に接し,また左側は食道にも接している.後縁は左右とも太い血管を包む鞘に接している(図76, 77, 88, 223226, 232).

 局所解剖:左右両葉は5 N8cmの長さで,2~4cmの幅をもち,また中央部で1.5~2.5cmの厚さがある.右葉は左葉にくらべてたいてい幅も長さもやや大きい.両葉の主軸は下方から斜めに上後方に向かっている.両葉とも第5と第6気管軟骨から甲状軟骨の後縁までのびており上方では摩さを減ずる.結合組織が両葉を気管と輪状軟骨と甲状軟骨に固着せしめている.

 は人によって大きさと形に相違があり,ときには全く存在しないこともあるが,幅はだいたい1.5~2cm,厚さは0.5~1.5 cmであり,ふつう第3と第4の気管軟骨の上にある.峡の上縁から,あるいは左右の両葉のうちの1つ(通常は左葉)から錐体葉Lobus pyramidalisとよばれる腺実質のかなり長い突起が舌骨に向かって上方にのび,ちょうど甲状軟骨の左板の上にのっている.錐体葉はときどき上方が下方より太くなっていたり,他の甲状腺の部分から分離していたり,あるいは2つの部分に分れていたりする.錐体葉は2例に1例の割で存在する.(日本人の甲状腺の両葉の長さは左2.6~4.5cm,右3.1~4.5 cm,幅は左1.1~2.0cm,右1.6~2.5cm,厚さは左1.1~2.0cm,右1.1~2.5cm, である.錐体葉は71.7%に存在する(尾関才吉,東京医会誌24巻1号,1910).)

 甲状腺挙筋甲状腺下制筋Mm. levator et depressor glandulae thyreoideaeについては第1巻394頁を参照されたい.

 甲状腺の重さは30grから60grの間にある. Wagenseilによると17.7grから28.1grであるという.(日本人の成人甲状腺の平均重量は男19.17gr,女15.24 gr(岡暁,京都医誌38巻,昭和16年下).あるいは男19.18gr,女16.78grである(佐藤文一,東京医大誌8巻3号).)

甲状腺は地方的によくあらわれるいろいろな種類の病的肥大をおこすことが少くない(甲状腺腫Kropf, Struma).甲状腺の色は通常は暗赤褐色であるが黄色がかつていることもある.

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最終更新日13/02/03

 

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