Rauber Kopsch Band2. 171   

 主細胞Hauptzellenはたいてい明るくて原形質に乏しく,外形質性の丈夫な壁をもっている.そのうち少数の細胞は細かい粒子のある原形質をもっている.したがって粒子のほとんど無い明るい細胞と,粒子が豊富で濁っている細胞とを区別できる.もう1つ別種の細胞として色素好性細胞oxyphile Zellenがある.この細胞は非常に大きいことと,暗くみえる小さな核をもっていること,および細胞体全部に充満してかなり粗大な酸好性の粒子の存在によって主細胞と区別することができる.

 小胞らしいものの形成があちらこちらに見られ,そのさい細胞は大小いろいろの分泌小滴のまわりに放射状に配列している(図231).

 年令差:粒子に富む主細胞は年をとった人ではその数が多い.色素好性細胞は子供の場合にはまったくないか,あってもごくわずかで,10歳を過ぎるとやっと数が増しはじめ,初めは個々にあるが,後には群を作って集まっている.いわゆる小胞は年をとるとともに増加する.

[図230]上皮小体 53才の男×250 (A. Kohnによる)

 

胸腺Thymus, innere Brustdrüse (図223, 227, 228, 232)

 胸腺は生後最初の何年かの間だけ完全な発達を示し,ことに第2年ないし第3年のうちにもっともよく発達している.その後はかなり長い間ほとんど成長が止まり,性的に成熟する時になると退行がはじまるが,高年にいたるまで存在はしている(Waldeyer, Hammar).子供の時には胸腺はリンパ球が作られる主な場所の1つをなしているが,成人してからはだんだんとその影が薄くなる.

 胸腺は成人においては左右各側に1つずつの細長い右葉左葉Lobus dexter, sinisterからなっていて,頚の下端から胸腔の上部にのびている.胸腔では前縦隔において太い血管と心膜嚢の前方にあり,左右の胸膜の縦隔部のあいだに位置をしめている.そして気管の前方を頚部に向かって上方にのびている.左右の両葉は正中線でたがいに接していて,ほぼ対称的な形をしているが,左葉のほうが大きいこともあり,あるいは右葉が大きいこともある.両葉をつなぐ部分がしばしば存在する.ときおり両葉が広い範囲にわたってつづいていることがある(図121).

 局所解剖:胸腺は上方に向かって甲状腺の下縁まで達しているのが普通である.結合組織が胸腺の底を心膜嚢に固着させている.前面はかるい凸を画いて胸骨の上部に密接してザる.新生児では第4肋軟骨のところにまで達している.結合組織が胸腺を上記の諸器官にくつつけているが,それより上方では同じように大動脈弓と老の枝,ならびに左腕頭静脈,気管た結合している.外側縁は内胸動静脈の近くで胸膜の縦隔部に接しており,また頚蔀では太い諸血管を包む鞘に接している.内側縁は結合組織によって左右の両葉がたがいにつながっている.

 大きさ:出産時においては長さ5~6 cm,底における幅3~4cm,厚さ1cmであり,重さは15~20 grの範囲である.第2年では重さは25~28 gr,青春期では37grである.比重は初め1.05であるが,脂肪の含有が増すとともに減少する.実質は約85%の水分を含んでいる.Hammarは20年間にわたる研究を総合して胸腺実質の平均重量として次のような結果をだしている.すなわち5才まで19.82gr,6才~10才21.88gr,11才~15才20.97gr,16才~20才13.85gr,21才~25才10.05gr,36才~45才3.79 grである.47才以後は量がなお減少してゆく.(日本人の胸腺の平均重量は新生児9.52gr,1才6.08 gr,5才12.22 gr,10才14.41 gr,15才16.28gr,20才11.95gr,25才11.52 gr,30才9.52 gr,31~35才10.46 gr,36~40才8.50 gr,41~45才8.48 gr,46~50才8.51gr,51~55才9.51 gr,56~60才6.49 gr,60~70才7.02gr,70以上6.50grである(石橋松蔵, 日病理会誌6, 大正5年).あるいは(佐藤文一,東京医大誌8巻3号)1~30目の男18.28 gr,女16.35 gr,3~5年の男32.19gr,女30.50gr,6~9年の男33.75gr,女26.14gr,10~14年の男30.35gr,女22.45gr,16~19年の男31.26 gr,女27・85gr,20~29年の男26.37gr,女24.89gr,30~39年の男24.85gr,女21.91gr,40~49年の男23.23gr,女23.75gr,50~59年の男20.00gr,女20.84gr,60年以上の男19.68gr,女18.21 grである.)

S.171   

最終更新日13/02/03

 

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