Rauber Kopsch Band2. 185   

こうして各々の糸球体は2つないし5つの小葉からなりたっていて,これらは裂け目によってたがいにかなりはっきりと分れている.毛細管はふたたび輸出細動脈Arteriola efferensというただ1本の動脈に集まり,輸入細動脈と密接して血管極のところからボーマン嚢を出てゆき,その先きがふたたび分れて毛細管網を作っている.

 糸球体嚢のなかにある糸玉のような血管の集りを腎糸球体Glomerulum renaleと名づける.血管極はボーマン嚢の単なる隙間では決してなくてその壁が折れ返っているところであり,それには上皮と基礎膜とが関与している(図246).こうして外側の嚢のなかに内側の嚢ができる.内外の両嚢の間には曲部とつながるところの嚢内腔interkapsularer Raumがある.内側の嚢は糸球体をぴったり取りかこみ,また糸球体の小葉の間にも入りこんでいる.内側の嚢をなす細胞が被蓋細胞Deckzellenであって, K. W. Zimmermann(1933)によると人では簡単な形をしていて(図248),個々の細胞の境はあるところではかなりはっきりしているが,あるところではあまりはっきりしていない.

[図249]a ラットの腎臓細胞を遊離させたものとその小棒構造(Zimmermannによる) ×400

 bとC 尿細管の上皮細胞 モルモツト側方および表面からみたところ,クロム銀染色.×500(Böhnによる)

 しかしvon Möllendorff(Z. Zellforsch., 6. u 11. Bd. )とBargmann(1931)は被蓋細胞が構造および形の上から血管の外膜細胞に等しいと考えている.しかもClara(Z. mikr.-anat. Forsch., 40. Bd.,1936)は新生児の糸球体がまだすき間のない上皮で被われていることを発見した.しかし成人では血管趣の近くにだけ1層のつながった上皮がある.そのほかの糸球体表面の大部分は被蓋細胞のきれいな網で被われている.個々の被蓋細胞は枝分れして,その細大いろいろの突起が横に渡された橋でたがいにつながっていることがあり,糸球体の毛細管を爪の形かタガのように包んでいる(図250).この場合に被蓋細胞は直接に毛細管の基礎膜の上に接していて,その間に糸球体全体とその小葉を被うような特別な上皮下の基礎膜は存在しない.上皮下の基礎膜というものはないのである.(外側の)ボーマソ嚢の基礎膜は. 血管極にまでつづいてそこでなくなり,そこで毛細管の基礎膜がその続きをなしている.

 内側と外側の嚢およびこれらによって包まれた糸球体をひつくるめて腎小体Corpusculum renis)マルピギー小体Malpighisches Körperchen)といい,左右の腎臓におのおの約100万くらい存在する.

 Moberg(Z. mikr.-anat. Forsch.,18. Bd.,1929)は左右の腎臓の腎小体は合せて179万から347万のあいだにあり,したがって1個の腎については89万5千から173万5千個あることをみいだした.

b)尿細管のそのほかの部分(図242, 246, 249258)

 ボーマン嚢をなす基礎膜と単層上皮は尿細管の壁に続いている.尿細管の頚においては上皮の丈が高くなって短い円柱形となるが,尿細管の曲部ではそれがもっと高くなる(図246).上皮細胞の原形質が基礎膜に接する外方の部分に一見,垂直に走る棒状の線維のような糸がはっきりとみえる.(Heidenhein).このような細胞を“小棒上皮細胞Stäbchenepithelzellen”といい,この小棒の集りを“小棒装置Stäbchenapparat”という(図249 a, b, 256).尿細管の内腔に向う側には放射状に並んだ繊細な条のある縁がある.

これを刷子縁Bürstenbesatzという.

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最終更新日13/02/03

 

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