Rauber Kopsch Band2. 189   

 ヘンレ係蹄の第2の太い部分は瓦屋根のようにたがいに並んだ丈の高い1層の上皮細胞からなっていて(図257),“小棒装置”はよく発達していない.しかし介在部,とくにその初まりの部には極めてはっきりした“小棒装置”がある.介在部の第2の部分すなわち結合細管は透明で丈の低い上皮細胞をもっている.この上皮細胞が集合部では高さを増して円柱形になる(図254, 255).第1次の枝,第2次の枝などとそれに乳頭管は円柱細胞をもっている(図257, 258).乳頭の表面は多列円柱上皮で被われ,これが次第に腎杯の移行上皮に移っていく.

 尿細管の基礎膜は(Mallによると)はなはだ繊細な原線維からできていて緻密なフェルトのようである.

 腎小葉Lobuli corticales, Nierenläppchenは皮質の小さい円錐状の部分で,それぞれ1個の髄放線とそれに属するマルピギー小体ならびに尿細管の系統からなりたっている.小葉間動脈と静脈はこれらの小葉の境にある.したがって各々の腎小葉は放線部Pars radiataと曲部Pars convolutaからできている(180頁をも参照のこと).

腎臓の血管,リンパ管,神経(図223236, 245248, 250, 251, 260,  261)

 腎臓の血管,すなわち左右の腎動脈腎静脈Aa. et Vv. renisは尿細管と同じよう.に腎臓のはたらきに適した巧妙な配置を示している.左右の腎臓はおのおの1本ないしそれ以上の腎動脈A. renalisによって養われている.腎動脈は大動脈から出ていて,腎臓という器官の大いさの割りにはなはだ太いものである.腎門へ入る前に腎動脈は何本かの枝に分れ,その多数のものは腎盂の前で腎洞にはいる.これらの枝は比較的細い枝を腎被膜と腎杯に送ってから葉間動脈Arteriae interlobares renisとなって,枝を出さないで腎乳頭や錐体のあいだを通って錐体底にいたり,錐体底に沿って皮質の方に向かって凸の不完全な弓を画きながら走っている(図260).

 弓の凸縁から規則正しい間隔をおいて皮質内に向かって放射状に放線状皮質動脈Aa. corticales radiatae(図260のという枝を出している.この枝のいちばん外側にある終枝は皮質の毛細管網のなかに直接に合している.しかし放線動脈からでる多数の側枝は輸入細動脈Arteriolae afferentesであって,この細動脈はおのおの1つのマルピギー小体にすすみ,そこで迷網Wundernetzとよ1ばれる動脈性毛細管の網を作り,ふたたび輸出細動脈Arteriola efferensという1本の動脈になって出てゆく(図247).

 放線状皮質動脈の少数の枝は腎臓の表面まで達して腎被膜にひろがっている.この枝を被膜枝Rami capsularesというが同時に腰動脈の細い枝ともつながっている.

 輸出細動脈は輸入細動脈よりやや細くて,毛細管の広くひろがった網に移行し,この毛細管は髄放線では長くのびた網の目をもち,迂曲した尿細管の周りでは丸みをおびた網の目をもっている.

 毛細管網は輸出細動脈のつづきをなすのみでになくて,そのほかに上に述べた放線動脈の終枝および一部の輸入細動脈からの直接の枝もきている(K. Ludwtg 1843;Elise Dehoff, Virchows Arch., 228. Bd.,1920).

 この毛細管網からやっと静脈が出て来る.これは放線状皮質静脈Venae corticales radiatae(図261 b)とよばれ,同名動脈のそばを走って弓形静脈Venae arciformesというアーケード形の静脈に開口している(図261 b).ついで弓形静脈は葉間静脈Vv. interlobaresに移行し腎洞のなかで腎静脈に集る.皮質の最外部の静脈は皮質の辺縁に散在している星状静脈Venae stellatae(図261 g)という小さな静脈に集る.この静脈は放線状皮質静脈につながるか,または直接に弓形静脈につながっている.

 皮質の血管は以上のような状態である.髄質は血液を髄質直細動脈Arteriolae rectae medullares(図260のから受けとっている.この直細動脈は一部は糸球体の輸出細動脈からつづき,一部は放線状皮質動脈から直接の枝として,また一部は動脈が錐体の底に沿って弓をなして走っているところの凹縁から出ている.髄質の直細動脈は鋭角をなして枝分れをして,これをくりかえしながら尿細管の間を下行し,毛細管の密な網を作って尿細管を包み,乳頭の表面にまでのびている.乳頭では動脈の輪をなして乳頭管の開口部を取りまいている.戻っていく静脈は髄質直細静脈Venulae rectae medullares(図261 p)といい,弓形静脈に開口する.

 腎臓に固有の機能調節装置がマルピギー小体の血管極の近ぐにある.すなわち極枕Polkissenと血管極のそばならびに血管のまわりにある細胞の集団,および密斑Macula densaである.

S.189   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る