Rauber Kopsch Band2. 194   

この2本の尿管は遅かれ早かれいっしょになって膀胱に開口するが,ときには別々に開口していることがある.あるいは1本が膀胱に開口し,もう1本は膀胱よりも下方で開口している.膀胱に開口する2本の尿管のうち,下方に開口するも,のが上方の腎杯から出ている.きわめてまれであるが1側に3本の尿管が存在していた.

 尿管は前後の方向にいくぶん平らな形の管で,その直径は4~7mmである.

 尿管は小骨盤の入口に向かって下方かつ内側に走り,小骨盤のなかで前方かつ内側に曲がって膀胱底の側面にいたる(図166).したがって腹腔部Pars abdominalisと骨盤部Pars pelvinaを区別する.尿管はその経過の全体にわたって腹膜の直下を走り,疎性結合組織によって隣接器官に固着している.

[図263]短い中間部をもった広い袋状の腎盂(9/10)

[図264]長い中間部をもった管状の腎盂(9/10)

  尿管の長さははなはだまちまちであって,左右の長さも違うのが普通である.男の尿管の長さは右が290mm,左が303mmであり,女は右が282mm,左が292mmである.--大骨盤と小骨盤の境では屈曲が見られる.(日本人の尿管の長さは平均して男では右29.8cm,左30.6cm,女では右28. 9cm,左30.1cmである(喜多, 日本外科宝函7巻).)

 局所解剖:尿管は腰筋膜の上にのっていて,腰筋の中央部の下方において精巣動静脈が尿管の前を外側に走ってこれと交叉している.

 右の尿管は下大静脈に密接している.もっと下方では尿管は太い総腸骨動静脈の分岐部の上を越える.そのさい右の尿管は回腸の末端部の後方にあり,左のそれはS状結腸の後方にある.小骨盤のなかでは腹膜に被われて膀動脈索の上を越えて膀胱の側方にすすみ,膀胱に密接して前下内側に走って膀胱底にいたる(図265, 270).

 Waldeyerによると右の尿管は左にくらべて正中線からややいっそう離れている.したがって一般に右の尿管は比較的下方で腸骨動脈と交叉している.このことから右の尿管は外腸骨動脈の前にあることがいっそう多く,左のは総腸骨動脈の前にあることが多い.また総腸骨動静脈の分岐部の相異によってこの位置関係が変化する.

 男では精管が尿管と膀胱のあいだを内側かつ下方にすすんでいる.女では尿管は膀胱底に達するまでに子宮頚と腔円蓋の側面の近くを通る.子宮動脈は尿管の上を横走して子宮頚にいたる.左右の尿管は膀胱底のところでたがいに4~5cmへだたってその壁を斜めに内側かつ下前方に貫いている.その場合, ほぼ2cmの長さだけ壁のなかを通る.尿管の開口部は尿管口Orificium ureteris(図267)といい,せまい隙間状の裂け目である.男ではいつも前立腺の後上縁からほぼ3cm離れたところにある.

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最終更新日13/02/03

 

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