Rauber Kopsch Band2. 198   

膀胱の固定装置

 膀胱は下方において尿道の初まりのところで尿道に,男では同時に前立腺に付着している.そこには骨盤筋膜に属する恥骨前立腺靱帯Ligg. puboprostatica(恥骨膀胱靱帯Ligg. pubovesicalia)という特別な靱帯がある.膀胱頂からはその続きとして平滑筋をふくむ靱帯が膀に向かって走っている.これを尿膜管索Chorda urachiという.また側方はすでに閉鎖してしまつた膀動脈,すなわち臍動脈索Chorda a. umbilicalisが支えている(図166, 350).また位置を維持するものとしては膀胱に接している骨盤の結合組織,すなわち膀胱傍結合組織Paracystiumがあるほかにさらに骨盤内筋膜Fascia intrapelvinaと腹膜が関与している.腹膜は膀胱の後面の大部分を被って,そこから骨盤の側壁と女の内部生殖器,および直腸に向かっている.最後に左右の尿管および膀胱の血管も膀胱の位置の固定に役だっている.

 尿膜管索Chorda urachiは結合組織と特に膀胱に近い部分は平滑筋からなる來であって,膀胱頂から白線と腹膜とのあいだを脾に向かって進み,脾の結合組織と融合している.尿膜管Urachusは胎児発生の途中では膀胱と尿膜とをつなぐ管であったが,後になってもその形がしばしば管としての特徴をそなえていて,かなり長い管の形をしていたり,またその途中がところどころとぎれていたりする.この管がさまざまな形のふくらみと不規則性をもっており,膀胱によく似た上皮で被われている.この管は小さな開口部をもって膀胱腔と通じていることもときおりある.まれなことではあるが尿膜管が膀のところまでずっと開いていて,尿の一部が脾から流れでることがある.

 膀胱の前面は腹膜に被われていなくて,疎性結合組織と脂肪組織によって骨盤の前壁につながっている.膀胱は完全に充たされたときには腹膜をそこなうことなしに恥骨結合の上方から開くことができる(図266).

 後面は大部分が腹膜で被われている.腹膜が子宮か直腸に折れかえるところから先のところ,すなわち膀胱底は腹膜を欠いている.女の場合には膀胱のこの部分は,強靱結合組織によって子宮頚ならびに腟の前壁とくここにいている(図276).それに対して男では後方の隣接器官として直腸がある.しかしこの両者のあいだには左右に精管の膨大部,およびその外側に精嚢腺が入りこんでいる.精嚢腺の下端は前立腺に達している(図262, 266, 270)

膀胱壁の各層(図268, 269)

1. 漿膜は膀胱の表面の一部だけしか被っていない.漿膜については膀胱の表面の観察のところですでに記載した.

2. 筋層は平滑筋でできている.筋層は内方と外方の縦走筋層と,その間にある輪走筋層とからなりたっているが,これらの各層はある程度たがいに入りまじっている.

a) 外層(図268,1, 3, 5)は膀胱の前面と後面において最もよく区別できる.この層は男女とも前方は膀胱の頚部と恥骨および恥骨前立腺靱帯(恥骨膀胱靱帯)のところで始まり,膀胱の前面に沿って頂まで達し,そこを越えて後面から膀胱底を通って前立腺の膀胱面にいたる.女の場合には腔の前壁まで続いている.膀胱の側面では表面の線維はかなり斜めに走り(図268, 4),一部はたがいに入りまじり,男の場合は前立腺に達している.膀胱頂では筋束があらゆる方面から尿膜管索に続いており,一部はこれを係蹄状にとりまいている.女では平滑筋の束が膀胱の外側の縦走筋層を子宮,および直腸の筋肉につないでいる.これを直腸子宮筋Mm. rectouteriniという.この筋は腹膜のひだのなかにある.

S.198   

最終更新日13/02/03

 

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