Rauber Kopsch Band2. 201   

 リンパ管は床管におけるよりも乏しいが,膀胱底と膀胱三角において最もよく発達している.

 粘膜のリンパ管は小さな幹に集まって,一部はそれ単独で,一部は筋層のリンパ管とつながって骨盤の側壁にあるリンパ節にすすんでいる.Gerotaは膀胱の粘膜にはリンパ管がないといったが,Lendorfはそれが確かにあるといっている.筋層のリンパ管には前と後の2部がある.これらのリンパ管がすべて膀胱の外側壁にすすみ,膀動脈とともにすすんで,これに沿って存在するリンパ節にはいっている.リンパ節はそのほか膀胱の前方の脂肪組織のなかにある.

 膀胱の神経は交感神経の腸骨動脈神経叢と脊髄神経の仙骨神経叢からきている.神経は結合組織のなかで密な網を作り,そのなかに神経節をもっている.また筋層の内部ではStöhrの終末網状体Terminalretikulumが作られている.

 膀胱の閉鎖は筋と静脈団によっておこる.すなわち筋によって狭ばめられた尿道口を粘膜がさらにたがいに密接することによって閉じるのである.筋の配列は膀胱が充満すればするほどしっかりと出口を閉じるようになっている.--膀胱の出口が開くのは膀胱垂が後に引かれることによって起る.これは膀胱垂後引筋M. retractor uvulae(Heiss 1928)という特別な筋束によって起り,同時に膀胱底が下にさがり,それによって膀胱前立腺靱帯が緊張して,膀胱の出口が前方からしっかり支えられるのである. Heiss, R., Schriften Königsberger Gelehrte Ges.1928.

 

D. 尿道Urethra, Harnröhre

 男女の生殖器の項を参照のこと.

腎上体(副腎)Corpus suprarenale, Nebenniere(図166, 233238)

 腎上体は左右2つある扁平な器官で,それぞれのがわの腎臓の上端の近くにある.腎臓と腎上体のあいだは脂肪組織が境をしている.左右の腎上体の形がいくらか違っていて,左のものは半月形に近くて右のは三角形である.左右の腎上体にはそれぞれ前面後面Faclesventralis, Facles dorsalisがあり,またくぼんだ腎面Facles renalis,と上縁・内側縁Margo cranialis, Margo medialisがある.後面に腎上体門Hilus corporis suprarenalisがある.

 被膜をとおして深黄色ないし褐色がかった皮質Substantia corticalis, Rindensubstanzがすいて見えるので,腎上体は黄色をおびている,皮質は切断面ではかたくて条がついており,わずかな髄質のまわりをとり囲んでいる.髄質Substantia medullaris, Marksubstanzはやわらかくて粘土状の感じがあり,成人では灰色をしている.

 おのおのの腎上体は丈夫な線維性の被膜で包まれている.被膜は皮質と密につながっているので皮質を損なうことなしにこれをはがすことはできない.被膜からは豊富な線維性の突起が内部に入りこんでいる.

 腎上体の重量は11grから18grである.若い人や,子供,あるいは胎児では相対的の重量が大きい.長さは4~6cm,幅は2~3cmのあいだにある. Hammarによれば重量は3.5~8.5grしかないという.皮質と髄質との比は6.5~17. 6:1である.(Hammar, A., Z. mikr.-anat. Forsch.,1. Bd.,1924).(日本人の腎上体の重量は平均男7.5gr,女7.05 grである.長さは平均2.7 cmから3.26 cm,幅は5.3cmから5.68cm,厚さは4.4 cmから5.5 cmである(羽太鋭治,日病理会誌,1918).また成人の腎上体の平均重量は男では右8.71gr,左9.26 gr,女では右7.98 gr,左8.29gr(岡睦,京都医誌38巻, 昭和16年下),あるいは(佐藤文一,東京医大誌8巻3号)男では右5.94gr,左6.39 gr,女では右5.01gr,左5.25grである.)

 皮質は中胚葉に由来し,髄質は交感神経に由来する.

 局所解剖:I. 全身に対する位置の関係:腎上体は上腹部の外側部にある.II. 骨格との位置関係:第11胸椎の高さにおいて脊柱の横にある.III. ほかの諸器官との位置関係:左右の腎上体は内側は横隔膜の腰部,下方は腎臓の上端, 後方は横隔膜にそれぞれ接している.右の腎上体の前方には肝臓があり,内側には下大静脈と十二指腸がある.左の腎上体は大動脈の近くにあり,膵臓と脾臓に接しており,前方は網嚢によって胃と隔てられている.左右の腎上体の存在する領域に腹腔神経叢の大きな神経節群がある.

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最終更新日13/02/03

 

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