Rauber Kopsch Band2. 208   

 原始卵胞がもっている1層の扁平な卵胞上皮の細胞はその数を増し,同時に層の数も次第にふえていく(図277279).こうなった卵胞を2次卵胞Folliculi ovarii secundariiという.卵胞細胞の間の1ヵ所,あるいは数ヵ所(後には融合して1つになる)に初めは小さいが,すぐ皿のような形でひろがる隙間ができる.そのときに周囲の卵胞細胞は液体を分泌し,一部の卵胞細胞は核分解の過程をへてその液体にとけこんでしまう.この液体は卵胞液Liquor folliculiといい,隙間がひろがるとともに次第に量をまし,卵は多数の卵胞細胞に包まれて卵胞の壁におしつけられ,そして卵胞細胞は増殖を続けてゆく.こうして初めは充実していた卵胞が今や大きな胞状卵胞Folliculus ovarii vesiculosus, Bldschenfolliket(グラーフ卵胞Graafscher, Follikel)となり,その直径は8mmにも達する.卵は卵胞のなかで卵巣の表面とは逆のがわにあって,卵胞細胞によって包まれている.(図273, 279).

 そのあいだに卵の発育もすすみ,その被膜である透明帯も厚くなる.同時に卵巣の支質から卵胞上皮を包む被膜ができる.これを卵胞膜Theca folliculiという.かなり発達した卵胞ではこの被膜に,内方にあって細胞と血管に富む内層Stratum internumと,それより強靱で線維に富む外方の外層Stratum externumが区別される.胞状卵胞はStieve(1943)によるとこの状態を何ヵ月も続けている.この期間を“2静止期zweite Ruheperiode”という.

 したがってグラーフ卵胞には,1. 外方の結合組織の被膜,すなわち卵胞膜Theca folliculi(その内側の部分は血管とリンパ管を豊富にもっている)2. 卵胞壁のところにある多層の卵胞上皮,すなわち卵胞顆粒層Stratum granulosum folliculi(簡単に顆粒層Granulosaとも呼ばれる),および卵をふくんで卵胞腔に突出している卵丘Cumulus oviger, Eihtigel, 3. 卵胞液Liquor folliculiがある.

 卵巣のなかで卵胞がどのように分布しているかというと,すでに述べたごとく約40µくらいの,最も小さい卵胞はその大多数が卵胞帯にある.それよりいくぶん大きいものはそれより少し深いところに散らばつている.そこには0.5~0.6mmの直径をもつ,かなり大きな卵胞もあって,たいてい1列にならんでおり,よく発達した卵巣では50から200,ないしはそれ以上存在する.

 さて次ぎにくるのが“成熟期ReifePeriode”で,これは卵胞の破裂する時までである.この時期には細胞はかなり短い期間に破裂するまでに成熟し,そのときの直径は15mmないしそれ以上である.このときに顆粒層の細胞も増殖して,8~16層をなして重なる.卵丘もいっそう細胞が豊富になる.卵巣の表面にもりあがった卵胞壁に1少部分だけ単層の上皮をもったところがある.ここは卵胞膜もきわめて薄く,卵胞の破裂がここでおこるのである.卵胞が破裂すると,卵は放線冠Corona radiataという冠状をなして密集した2層ないし3層の卵胞細胞によって包まれたまま外に押しだされる.これが排卵Ovulationであって,卵はついで卵管に達する.卵は卵管で受精をしてさらに発達してゆくかあるいは受精しないで体からすてられる.

 グラーフ卵胞の成熟は性的に成熟した女においては周期的におこる.普通は28日間,つまり1回の月経の初まりから次の月経の初まりまで,すなわち性周期Zorklusと呼ばれる間に1つの卵胞が完全に成熟する.グラーフ卵胞は完全に成熟すると破裂する.それは月経周期の第14~16日目であることがもっとも多い.しかしStieveによると何日目でも排卵は起りうるという.

 卵じしんはまず卵管にはいり,ついで子宮に達する.ところが一方,破裂した卵胞の上皮からは,その個々の細胞の容積が増大することだけによって(細胞の数はふえない)黄体Corpus luteum, Gelbkörper(図281)ができる.これには卵胞の結合組織の壁も関与している.黄体の直径はほぼ1cmに達することがある.その中心は初めは血液で充たされた腔所である.あとになって現われるヘマトイディンの結晶は初めに流出した血液が変化して生じたものである.

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最終更新日13/02/03

 

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