Rauber Kopsch Band2. 209   

 黄体は初めは赤体Corpus rubrumというが,2日目遅くとも3日目には黄体になる.それとともに大きくなった卵胞細胞の内部には多数の脂肪粒子が現われて,血液は吸収され,ついでルテイソ細胞による黄色調がはつぎりと現われてくる.これがいわゆる“開花の状態Zustand der Blüte”である.その期間がどのくらい続くかはまだ確定していない.それに続いて血管が減少して黄体が萎縮し,脂肪化が起こって退縮する.その最後の残りものとして結合組織性の白い痕ができる.これを白体Corpus albicansという.初めの出血の残りものの量が多い場合セこは,昔の解剖学では黒体corpora nigraと呼んでいた.黄体を妊娠黄体Corpus luteum graviditatisと月経黄体Corpus luteum menstruationisに分ける.妊娠黄体はちょうどその卵胞から出た卵子が受精して,子宮のなかで発育しているときに生ずるものである.月経黄体は持続が短くて,大きさもいっそう小さい.

 最終月経のときに成熟していた卵が受精したのか,あるいは最初に月経がなくなったときの卵が受精したのかという問題については今もなおいろいろの説がある.この2つの可能性があるわけであるが,婦人科手術の結果によれば後者の見解が正しい.妊娠のときの胚の発達をみると,月経の後に成熟した卵の方があてはまるのである.

 卵巣にあるすべての卵胞が成熟するのでは決してない.退縮をはじめた大小いろいろの,まだ破裂しない卵胞が左右の卵巣に見られる.卵胞の退行という重要な現象については数多くの研究がなされ,卵胞閉鎖Atresia folliculiと名づけられている.その結果として閉鎖体Corpus atreticumができる.グラーフ卵胞のあいだにある結合組織は卵巣支質Stroma ovariiといい,その結合組織細胞は体が短くて,紡錘形または円みをおびた形をしており,突起をもっていたり,もっていなかったりする.そのほか血管に伴なって線維性結合組織のかなり長い束があり,これが弾性線維をもっている.また(Ferner, Z. Gynäk.,1951)格子線維の網材がある.

 髄質はすなわち門支質Hilus-Stromaという基礎層のところでは主として線維性結合組織からできている.

[図280]透明帯と放線冠をもった成熟卵 破裂直前の卵胞のもの,38才の女.×250 (Stieve, H., Z. mikr.-anat. Forsch., 53. Bd.,1943による)

[図281]黄体 卵胞破裂後14日目=性周期28日目.×5

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最終更新日13/02/03

 

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