Rauber Kopsch Band2. 210   

この結合組織はかなり太い束をなして血管に伴ない,また動脈の周りでは平滑筋ももっている.

 卵巣門の組織のなかで,しかもたいていは神経のそばに,あるいは神経の内部のことも多いが,大きい細胞の1群があって,この細胞は形態学的には精巣の間細胞Zwischenhodenzellenの特徴をすべてそなえている.後者と同じく,この大きい細胞は大小いろいろの細胞内粒子の集りをもっており,細かい線維よりなる結合組織の膜で包まれ,またリポイド粒子や色素粒子,あるいはラインケ結晶Reinkesche Krystalleをもっている.したがってこの細胞を“extraglanduläre weibliche Zwischenzellen(女性の腺外性間細胞)”という(Endokrinologie,1. Bd. ).

卵巣の血管とリンパ管

 卵巣の動脈は大動脈から出ている卵巣動脈A. ovaricaの諸枝と,内腸骨動脈から来ている子宮動脈の卵巣枝R. ovaricusとである.動脈は卵巣門から入り,門支質で枝分れし,うねったり,ラセン状の経過を示していることが著しい.皮質ではとりわけ豊富な網を作って胞に接してひろがっている.なかでも卵胞膜の内層にそれが多く分布するのでこの層を卵胞脈管膜Tunica vasculosa folliculiといい,それに対して卵胞膜の外層を線維膜Tunica fibrosaという.

 静脈は動脈の枝に沿っていて,かなり太い口径をもち,門のところで太い小幹がたがいに合して静脈叢を作っている.

 リンパ管は卵巣の表面で密な網を作っており,また皮質のなかにも豊富にある.皮質では特に卵胞膜のなかで椀状に広がった網をなしている.門のところからはかなり太いリンパ管の幹が出て,卵巣動静脈に沿って腰リンパ節にすすんでいる.

卵巣の神経

 神経は乏しくて,太い血管に沿って走り,多くは無髄線維であるが,有髄線維をももっている.神経には血管に行くものがあり,また有髄線維で卵胞に達するものがある.近年の研究によると軸索の枝は卵胞のなかにはいり,卵胞上皮を貫いているという.

 神経は交感神経と副交感神経から来ている.前者はIV~XIIの交感神経幹神経節と,交感神経幹の下部の上方部から来ている.そして腹腔神経叢と腸間膜動脈神経叢をへて,(そこで?)迷走神経の副交感線維といっしょになり,卵巣動脈に沿って神経叢を作りながら卵巣にいたる.副交感神経は卵胞の成熟をうながし,交感神経はこれを遅らせる(R. Emanvel, Z. Geburtsh.,124. Bd.,1942).

2. 卵巣上体(副卵巣)と卵巣傍体Epoophoron et Paroophoron, Nebeneierstock und Beieierstock(図290)

 卵巣上体は子宮広ヒダの両葉のあいだにある.これがよく発達しているどきには卵管と平行に縦に走る管,すなわち卵巣上体縦管Ductus epoophori longitudinalis(ガルトナー管Gartnerscher Gang)と,横に走る横小管Ductuli transversiとからなっている.卵巣上体縦管は子宮め側壁を下方にすすみ,処女膜に達していることさえもある.横小管は卵巣門のところから始まって,縦管に開口している.これらの管から小さくて柄のある小胞が突出していることがしばしばで,これを胞状垂Appendices vesiculosaeという.これちの管は結合組織と上皮からなる粘膜でできている.上皮はたいてい線毛円柱上皮である.

 卵巣傍体は卵巣上体より小さくて,骨盤壁の近くで卵巣間膜の起始部の下外側にあり,卵巣動脈の比較的太い枝の間にある.一枝分れした何本かの小管からなっていて,円柱上皮で被われている.これもやはり退化したものでウォルフ体Wolffscher Körperの原腎部Urnierenteilのなごりである.

 卵巣上体および卵巣傍体と相同のものが男の生殖器にある.卵巣上体に相当するのが精巣上体Epididymis, Nebenhodenであり,卵巣傍体に相当するのは精巣傍体Paradidymisである.

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最終更新日13/02/03

 

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