Rauber Kopsch Band2. 211   

3. 卵管Tuba uterina, Eileiter(図275, 276, 282285, 287, 290)

 卵管は卵巣と子宮をつなぐもので,卵巣の導管である.左右の卵管は子宮とともに前額面上にある大きな腹膜のひだ,すなわち子宮広ヒダPlica lata uteriに包まれていて,ちょうどこのヒダの上縁のところに卵管が位置をしめている.

 卵管は9~16cmの長さで平均0.5 cmの太さをもち,子宮の内腔から卵管子宮口Ostium uterinum tubaeをもって始まり,子宮壁を貫いている.この部分を間質部Pars interstitialisという.ついで子宮の上外側縁のところから外に現われる.ここでは管が細くて索状をしており,峡部Isthmusという.しかしそこから外側に向かってかなり急激に太くなり,膨大部Ampullaを形づくる(図284, 290).そこでは卵管は曲がって走り,骨盤の側壁から後方かつ下方に向きをかえて卵巣に達する(図276).卵巣の近くでは卵管はロート状に広がっている.その部分を漏斗Infundibulumという(図284, 290).漏斗の縁には深い切れこみがあり,そのためにかなり多数の簡単な形の突起や,さらにいくつもの切れこみをもった複雑な突起に分れている.これをFimbriaeという.これらの突起の1つは他のものより目立って長く,漏斗の空所とつづく溝によって2つの唇Lippenに分れており,腹膜の1つのひだに包まれて卵巣に達している.これを卵巣采Fimbria ovaricaという.采によって円錐状にかこまれた漏斗の奥には円形のせまい口がある.これを腹腔口Ostium abdominaleという.卵巣を飛びだした卵はこの口を通って卵管に入り,さらに卵管を通って子宮にいたる.

 以上は卵の正常な経過であるが,ときにはこれが腹腔にはいることがある.しかもその卵が受精するとそのまま腹腔のなかで発達する(腹腔妊娠Graviditas abdominalis).あるいは卵が卵管のなかにとどまって発達することがある(卵管妊娠Graviditas tubaria).そのほか卵胞破裂の後に受精した卵が卵巣のなかにとどまっていて,卵巣妊娠Graviditas ovarialisという形で発達を続けることがある.

[図282]膨大部激髪の1つ 横断×90

卵が卵巣から卵管と子宮を通り着床部にまで運ばれることは人の場合には主として上皮の線毛運動によって行われ,それと共に卵管壁の筋の作用や血管の膨圧がある程度の役割を演じているようである.

 ときおり卵管のかたわらに1つないしそれ以上の副卵管Tubae accessoriae, Nebenöffnungenという開口部があって,卵管と同じく采でとりかこまれている.副卵管は卵管に直ぐにつづていることもあり,あるいは卵管から分れる特別な管につづいている.

 1つ,または2つ以上の采にしばしば長い柄をもった円みをおびた大小いろいろの小胞状のものがあって,これは胞状垂Appendices vesiculosae, Hydatidenとよばれる(図284).これと同じように漿液でみたされたものが卵巣上体のところにも存在する.

 層構造:卵管の壁は粘膜,筋層,漿膜の3層からできている(図287).

 粘膜は多数の縦のひだを持つており.さらにそのひだはたくさんの細かいひだに分れている.これを卵管ヒダPlicae tubae(図282)といい,そのために卵管の横断像で内腔は星状を呈している.このひだは膨大部において著しく発達し,これを膨大部ヒダPlicae ampullaresという.それに反して峡の横断面では丈の低いわずかなひだがあるだけで,これを峡部ヒダPlicae isthmicaeという.粘膜は軟かいが,かなり厚くて次のものからなりたっている.

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最終更新日13/02/03

 

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