Rauber Kopsch Band2. 216   

子宮体の粘膜は平滑で軟かい.子宮頚の粘膜はそれより画くて厚く,縦走する2つの高まりをもっていることが著しい.この高まりの1つは前壁に,他の1つは後壁にある.しかしこれらはたがいに触れあわないで,少しずれていてたがいに並ぶようになっている.この高まりからは(とくに前壁の高まりから)きれいに並んだいくつかの小さいひだ,ないしは稜線が外側にのびて,シュロの葉のように広がっている.それゆえ粘膜のこの構造の全体を椋状ヒダPlicae palmataeと名づけている(図290).

 粘膜の結合組織の部分は粘膜固有層Lamina propria mucosaeといい,細胞に富む細かい線維性の結合組織からできていて,そのなかに多数のリンパ球が存在する.粘膜を被っている上皮は単層の線毛上皮である(高さは平均30µ).上皮は月経のときに線毛を失うが,中間期にはふたたび線毛が現われてくる(図286).線毛の動きは腟の方に向かっている.上皮からは単純な形またはフォ一ク状に分れた管状腺が密に集まって固有層に入りこんでいる.これを子宮腺Glandulae uterinaeという.子宮腺はたがいに0.1~0.2mm離れていて,ラセン状に,あるいは軽くうねってのびている.腺体は繊細な基礎膜と単層の丈のひくい線毛円柱細胞からできている.子宮体のなかでは腺はここに述べた形をしている(図289).

 子宮頚の粘膜はいっそう厚くて,その子宮体に近いところでは線毛上皮をもっている(図286).そこでは細胞の高さがほぼ60µである.腟に近い外子宮口に向かったところは重層扁平上皮であって,その下に結合組織牲の乳頭がある.上に述べたような管状腺がわずかに存在するほかに,子宮頚腺Glandulae cervicales uteriという粘液腺がここにある.

 子宮頚腺では寒天様の分泌物がつまって嚢腫となることがある.この嚢腫は粘膜のなかにうずまっていたり,粘膜の表てに突き出ていることもある.このようにしてキビの粒からエンドウ豆くらいの大きさになる.これをナボツト小卵Ovula Nabothi, Nabothseierと名づけている.

子宮腔(図276, 288, 290)

 処女の子宮,あるいは1回の出産後に正常の大きさに復した子宮ではその内腔ははなはだ小さくてせまい.子宮の3つの部分に相当して子宮体腔Cavum corporis uteri,峡管Canalis isthmi,頚管Canalis cervicisを区別する.

 子宮体腔は横の方向の隙間で,子宮底の範囲では幅が広く,峡に向うにつれてだんだんせまくなる.それゆえ三角形をしている(図290).この三角形の底辺は上方に

あって,卵管の開口するところで左右とも鋭い角をもっている.三角形の頂点は下方にあり,峡管Canalis isthmiに移行している.峡管の長さは約6mmである.峡管は内峡官口Orificium internum canalis isthmiで始まり,外峡管口Orificium externum canalisisthmiをもって終わっている.峡管の終りから頚管Canalis cervicisが内頚管口Orificium internum canalis cervicis(すなわち言い換えると外峡管口)をもって始まり,外頚管口 Orificium externum canalis cervicisをもって腔に開口している.外頚管口はすなわち外子宮口 Orificuim externum uteri, aüßerer Muttermundであり,内頚管口は内子宮口innerer Muttermundである.(本書では内頚管口が内子宮口であるとしているが,JNAによれば内峡管口が内子宮口である.(小川鼎三))頚管は円筒形ではなくて,前後にやや扁平で,長軸の中央部にあたるところがやや広くなっている.その内面には上に述べた棕状ヒダがある(図290).

 子宮粘膜は性的に成熟した女では(周期的に)変化をなし,この変化は生殖作用と深い関係がある.この周期的変化はふつう4週間の間隔で(性周期Zyklus)おこり,外見的には周期のうちの一定の時期に現われる生殖器からの出血によって知ることができる.この周期的にくりかえされる出血月経Menstruation (Periode, Regel, monatliche Reinigung, Rose)と呼ばれる.月経は3~4(5)日間続くのが普通であるが,この目数は月経と月経との間隔と同じように,体質.気候・生活様式・あるいはそのほかの条件によって,ある程度の変動がある.

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最終更新日13/02/03

 

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