Rauber Kopsch Band2. 231   

 精巣の上端のところに精巣上体頭に密接して,しばしば小さな円いもの,またはやや長くのびたものがしっかりと着いている.これは精巣垂Appendix testis, ungestielte Hordatide(柄のない水胞体)とよばれる.また精巣上体頭にもしばしばそれより長い柄をもったものがついている.これを精巣上体垂Appendix epididymidis, gestielte Hydatide des Nebenhodens(柄のある水胞体)という(図296).

 これらのものは痕跡器官で,きわめて個体差がある.この2つが両方ともないことがある.これらはなかなかだいじな意義をもつもので,精巣垂は女の卵管の腹腔端に当り,精巣上体垂はウォルフ体Wolffscher Körper(原腎体)の名ごりであると一般に考えられている.これら2つの付属物のほかにもなお漿液を入れた漿膜の突出部のあることが珍しくない.その場合には水胞体の数が増していることになる.

 精索のなかで精巣上体頭の近くに第3の痕跡器宮というべき精巣傍体Paradidymis, Beihoden(ジラルデ器官(Giraldessches Organ))があり,これは結合組織のなかにうずまっており,ときには精巣上体とつながっている.これは白色または黄色をおびた小塊で,糸玉のようにからみあって盲状に終る小管からなりたっている.その上皮はなお残っているのが普通である.これは原腎の名ごりで女の卵巣薯体に相当する(図297).

 精巣の脈管と神経については245頁参照.

精巣の構造

 精巣はかなり厚い丈夫な被膜,すなわち白膜Tunica albugineaで包まれている.白膜の外面には精巣の胚上皮Keimepithelがある(図298).白膜は白色をした線維性の膜であって,内側は血管に富む疎性結合組織の層に移行している.間膜縁のところで白膜は内方に突出したかなり厚い高まりを作っていて,これを精巣縦隔Mediastinum testisという.その上部は下部より幅が広いが,間膜縁の一部をしめているだけである(図300, 8, 301).精巣縦隔の前縁と側面からは多数の線維性の索と精巣小中隔Septula testisとよばれる不完全な隔壁とが放射状に出ている.これらの外方の端は白膜の内面のいろいろなところに着いている.

 精巣の腺実質は軟かくて,帯赤黄色をしていて,しっかりとまとまっている細い糸の集団である.この集団は精巣縦隔に尖端を向けた錐体状の多数の小葉からなりたっている.

 精巣小葉Lobuli testisの数は250~300である.その大きさはいくぶんまちまちであって,前内側にあるものはそのほかの部分のものより長くて,幅も広い.精巣小葉はほとんど全部がまがりくねった細い管,すなわち精細管Tubuli contorti, Samenkandlchenからなっている.精細管は円い小管で約140µ(Stieve[1924]によると180~300µ)の直径をもち,たがいに数多くのつながりをもっている.またその初めは盲状に終わっているのが認められる.白膜の下にある精細管の網からは多数の小管が出て,まがりくねりながら進んで精巣縦隔に達している.その経過に伴って小管はたがいに鋭角を作って合しているのでその数が次第に減少する.ついで縦隔のなかにはいり,網のようにつながって精巣網Rete testis, Hodennetzを作っている,この網をなしている管の直径は24~180µの間である.

 精細管の壁は1. 何層かをなして重なる扁平な結合組織細胞;2. 繊細な基礎膜;3. 重層の精上皮Epithelium seminaleからなりたっている.精上皮には静止期と活動期とがある.同一の精巣のなかでこれら2つの状態が同時にあり,活動期のいろいろな時期がやはり同時にみられる.

 静止期には精上皮は円みをおびた細胞のいくつかの層からできている.それに対して活動期,すなわち精子発生Spermiogeneseの間には精上皮がはなはだ特徴のある分化をする(図298, 299,  320305)

S.231   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る