Rauber Kopsch Band2. 240   

 迷小管Ductuli aberrantesと精巣傍体Paradidymisは結合組織の壁からできている細い管で,内面は丈の低い線毛上皮で被われている.精巣上体垂Appendix epididymidisは丈の低い円柱上皮をもっている.精巣垂Appendix testisは血管に富む結合組織からなっている充実性の器官で,線毛円柱上皮で被われている.この上皮は表面にいくつかあるくぼみのなかにも入りこんでいる.また精巣垂が中空であることもあり,そのさいには内腔が線毛上皮で被われている.

 生理 作用:精巣上体はずっと古くから知られているように精子の集積する所である.しかしまた分泌器官でもあって,その上皮は特殊な分泌物を出している

(Hammar, Fuchs, v. Lanzなど).しかしv. Möllendorfによると精子がそのなかに浮んでいる液体は精巣で生じたもので,この液の一部が精巣上体管の上皮細胞によって吸収されるのであるという.Wagenseilはこの吸収は間違いなくおこるが,分泌もほとんど疑なくおこるという.

 Hammar, J. A., Arch. Anat. Phys.,1897-Fuchs, H., Anat. Hefte,19. Bd.,1902.--Wagenseil, E, Z. Zellforsch., 7. Bd.,1928-v, Lanz, Wallraff, Handfest und Wimmer, Z. mikr.-anat. Forsch., 37. Bd.,1935.

2. 精管と精嚢腺Ductus deferens et Glandula vesiculosa, Sainenleiter und Bläschendrüse(図262, 266, 267, 270, 297, 308, 309, 314, 315)

 精管Ductus deferensは精巣の導管であって,厚い壁をもち,円形の丈夫な管であって,50~60cmの長さがある.これは精巣上体管の続きをなしている.精管は精巣上体の下端で始まり,初めはうねりながら上昇するが,ついで精巣上体の内側と精巣の後部に沿ってまっすぐ上方に走る.しかし精巣および精巣上体とはこれらを養っている血管によってへだてられている(図297).ここでは精管は精索Samenstrangの主要成分をなしていて,精索のなかを血管,神経とともに浅鼡径輪にすすみ,鼡径管を通りぬける.腹膜下鼡径輪のところでは急に下方に向きを変えて小骨盤にはいる.したがって精管には精巣上体部・精索部(自由部と鼡径部)・骨盤部Pars epididymica, Pars funicularlis(Pars libera, Pars inguinalis), Pars pelvinaを区別する.

 局所解剖:精管は精索のなかでは精巣動静脈の後内側にあり,その固いことによってこれらの動静脈から容易に区別することができる.腹膜下鼡径輪のところで精管は動静脈と別れる.動静脈は腰部にすすみ,精管じしんは下方に向うのである.下腹壁動静脈は腹膜下鼡径輪のところでは精管の内側にある.精管は腹膜下鼡径輪から小骨盤にすすみ,腹膜によって被われており,腹膜をもち上げて小さなひだを生ぜしめている(図116).ついで膀胱の側面に達して,後方に曲り,さらに前方かつ内側に曲がって膀胱底にゆき,正中線のすぐそばで前立腺の膀胱面に達する(図262, 270).

 精管は骨盤のなかを走るあいだに,閉鎖した臍動脈(臍動脈索)の上を越え,そののち尿管の上を越える(図262, 270).膀胱底のところでは左右の精管は次第に近よtり,ついにはやや長めの2つの精嚢腺のあいだでたがいに相接して並ぶ.ここではもはや腹膜には被われていない.そのかわりに結合組織によって膀胱の後壁と直腸の前壁とにかなりしっかりと結合して,膀胱傍結合組織Paracystiumと直腸傍結合組織Paraproctiumのなかに存在している.

 精管の全長は50~60cmであるが,そのうちうねっていない部分は30~40cmである.左の精管は右のものより1~3cm長いのが普通であるが,まれには左右同じ長さのことがあり,それよりいっそうまれには右のほうが長い.これは陰嚢内で左の精巣がいっそう低い位置をとることが多いためである.精管はほとんど全長にわたって円柱形あるいはやや圧平された形で,直径は平均3.0ないし3.5mmである.

 精管はその終りのところが広くなって精管膨大部Ampulla ductus deferentisとなる.そこは少しくうねり,膨大部憩室Diverticula ampullaeという小さい膨らみを呈している.しかし精嚢腺の導管と結合するところに向かってまた網くなる.したがって膨大部は紡錘形をしている(図270).精管の終末部は射精管Ductus ejaculatorius, Ausspritzungskanäilchenといい,これは前立腺の体を貫いて精丘において尿生殖管に開口している(図266, 267).

 精管の壁ははなはだ厚くて固い.内腔はせまくて,管の外径のやっと1/31/6をしめるにすぎない.膨大部のところだけは壁が比較的薄くて,管は著しく広くなり,外方への膨らみがたくさんみられる.

S.240   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る