Rauber Kopsch Band2. 241   

 精嚢腺GIandula vesiculosa, Bläschendrüseは膀胱底と直腸のあいだで精管の外側にある.そして膜性の壁をもったやや長めの中空のもので,膀胱にしっかり着いている.

 その長さは4~5cm,幅は1.5~2.4 cmである.たいてい左右の大きさは同じでなく,またその大きさも人によってさまざまである(図262, 270).

 後端は鈍くて,左右のものが遠く離れている.しかし前方に向かってたがいに近より,膀胱の後面のところではそのあいだに左右の精管だけがたがいに近く並んではいっている.腹膜が膀胱底から直腸に折れかえるところは,ほぼ左右の精嚢腺の外側端を結ぶ横の線に一致している(図270).しかしこの腺の後面の一部は多少とも腹膜で被われていることがある.

 左右の精嚢腺は,複雑なたるみをもってややうねっている管であって,丈夫な結合組織によってそのうねりやたるみが保たれている.したがってこの器官の外観は多数のふくらみをもった袋のようである.つながりを取り除いて,袋をひきのばすと,その長さは10~12 cm,幅は0.5cmある.この管のいちばん外側の端は閉じて行きづまりになっている.そのほか必ずあるとはいえないが,普通は長短いろいろの側方への膨れ出し,ないしは枝分れが存在する.精嚢腺の前端は細くなっていて排出管Ductus excretoriusといい,まっすぐであって,前立腺の底のところで,同じく細くなった精管に鋭角をなして開口している.精管はそこから射精管という名前となるのである.

 両側の射精管の初まりのところは前立腺の膀胱面の後縁に密接している.射精管はここから前下方にすすみ,同時に正中線に近づいてゆく.ついで相並んで前立腺の峡と左右の両葉のあいだを前方に達する(図320).ぜんたいとして約2cm走っているあいだになおもいくらか細くなって,最後に左右それぞれ裂け目のような小さい開口部をもって尿管の前立腺部の後壁に開いている.そこを射精管口Porus ejaculatoriusといい,精丘の上で前立腺小室Utriculus prostaticusの口のすぐ左右に接している(図266, 267).

 射精管は精管と精嚢腺のなかに含まれている分泌物を尿管,すなわちもっと正確にいうと尿生殖管Canalis urogenitalisに送りだす役目をもつのである.

 精嚢腺の管系統の変異についてはPallin, Arch. Anat. u. Phys.1901を参照されたい.

精管と精嚢腺の構造

 精管は外側に線維性の被膜,すなわち外膜があって,そのなかに平滑筋の束がまじっている.内側は粘膜によって被われている.外膜と粘膜のあいだにはなはだよく発達した筋層がある.これらの各層は精巣上体管の各層の続きである.粘膜は白っぽい色をしていて,3本ないし4本の低い縦走するひだがあり,2列円柱上皮をもっている(図314).内腔を囲んでいる細胞はその自由面に不動毛が密生して束をなして突出しており,また細長い核をもっている.この細胞の底部のあいだにある基底細胞は球形の核をもっている.上皮の下には粘膜下組織がある.(粘膜固有層というべきであろう.(小川鼎三))

 それに続いて内側の縦走筋層すなわち内層Stratum internumと中央の輪走筋層すなわち中層Stratum mediumおよび外側の縦走筋層である外層Stratum externumとがある.筋線維の束は豊富な結合組織で包まれている.各層の境は腸のばあいほどには明瞭でなくて,筋束がいたるところで1つの層から他の層に移行している(Goerttler 1934).おのおのの筋束は管壁を内から外に向かってラセン状に走って貫いており,しかもその方向は右あるいは左にまいている.

 精管膨大部の壁はそれより上方にある精管の各部と同じ層をもっているが,筋層だけは発達がいっそう弱い.粘膜には網状をした多数の小さいひだがあって,不規則な多角形のくぼみや,小さなへこみを囲んでいる.

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最終更新日13/02/03

 

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