Rauber Kopsch Band2. 246   

 精巣の静脈はよく発達した蔓状静脈叢Plexus pampiniformisをなして精索のなかを上行している.これが病的な拡張をひきおこす傾向がある.この静脈叢は次第に何本かの静脈に集まり,最後に1本の精巣静脈Vena spermaticaとなる.その右側のものは近くの下大静脈に入り,左側は左腎静脈に開いているのが普通である.

 陰嚢の皮膚に分布する神経は腸骨鼡径神経の陰嚢枝と陰部神経の陰嚢神経である.また挙睾筋と肉様膜は陰部大腿神経の陰部枝で支配されている.精巣は精巣動脈神経叢からの神経を受ける.この神経叢は腎神経叢と上腸間膜動脈神経叢からきており,また腹大動脈神経叢から少数の細い神経を受けていて,精巣動静脈とともに精巣に達している.

 精巣はリンパ管がはなはだ豊富である.リンパ管は密な網をなして精細管にからみついている.そして細い管に集まって精巣小中隔のなかを走る.しかしリンパ管は精巣小葉のあいだでたがいに合している.流出路は2つある.主な流れは精巣縦隔に達し,ついで精索にすすむ.他のものは精巣ぜんたいの上を包んでいる白膜の下に広がるリンパ管網に注ぐのである.この網は白膜を貫いて多数の枝を漿膜下の密なリンパ管叢に送っている.重なりあったこれら2つの網から,おのおの幾本かの比較的太いリンパ管がでてきて精巣上体に向かってすすむ.こうして集合してできたリンパ管,と精巣縦隔のリンパ管から精索に沿って上行する4~6本のかなり太いリンパ管ができるのである.これらのリンパ管は2~4個のリンパ節に注ぐが,そのリンパ叢のうち右側のものは左側のより少し下方に存在している.右側のリンパ節は下大静脈に接しており,左側のは大動脈の側方で左腎静脈から遠くないところにある.それからリンパ管はさらに上方で大動脈の前面,およびこれと下大静脈のあいだにあるリンパ節とリンパ管にいたり,最後には乳康槽Cisterna chyliに開口している.

[図318]ヒトの右精巣の動脈(A. Jarisch,1899)

i 精巣動脈;e 挙睾筋動脈;d 精管動脈.

4. 前立腺Prostata, Vorsteherdrüse(図262, 266, 267, 270, 319321)

 前立腺はその大きさ(日本人の成人の前立腺の長さは平均2.72cm,幅は3.93 cm,厚さ1.71 cm,重さは14.74 grである(斎藤幹, 日医大誌5巻,昭和8年).)と形が食用栗に似た固い腺であって,その上方には膀胱の尿道への移行部がのっており,その内部に尿道の初部を含んでいる.この尿道の前立腺部Pars prostatica urethraeのほかに,前立腺にはなお形態学的に重要な前立腺小室Utriculus prostaticusがある.これは女の腟と相同のものである.そのほかに多数の腺,すなわち前立腺の腺Glandulae prostaticaeがあり,また多量の平滑筋と少量の横紋筋がある.それに射精管の終末部をももっている.

 局所解剖:前立腺は骨盤の下部において,骨盤筋膜の前部と内尿生殖隔膜筋膜とのあいだにある.側方は左右の肛門挙筋の内側縁によって境されている.恥骨結合からは1.0~1.5cm離れている.恥骨前立腺靱帯は前立腺の前面を恥骨の後面に固着させている.前立腺の側面は凸をなして,強く突出している(図262, 270).

 縦径は3.2 cmないし4.2 cm,幅は3.5 cmないし5cm,最大の厚さは1.7cmないし2.3cmである.重量は17grないし28grである.

 底にあたるところは膀胱面Facles vesicalisといい膀胱と結合している.尖端は尿生殖隔膜に向かっている.前面は恥骨面Facles pubicaといい恥骨結合に面している.後面,すなわち直腸面Facles rectalisは直腸に向かっていて,その前壁とは結合組織と平滑筋束によって結合しており,直腸内から前立腺を触れることができる(図266).

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最終更新日13/02/03

 

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