Rauber Kopsch Band2. 254   

 Henneberg(Verh. anat. Ges.,1912)によると陰茎縫線は胎児および新生児においてはたいてい存在する.成人では約90%において欠如している.陰茎根から包皮まで達している縫線は3%に,陰茎の縦軸の中央部まで達しているのは5%にみられた,陰嚢縫線は成人においてそれよりずっとしばしばみられるが,すべての場合に存在するわけではない.

 亀頭頚と亀頭冠の周囲,および包皮の内側の膜にはいろいろな形と大きさの脂腺がある.これを包皮腺Glandulae praeputiales(Tysoni)という.これは簡単な小窩の形から,かなり複雑な形のブドウ状のものまであって,包皮小帯の周りに最もたくさん存在する.その分泌物は包皮垢Smegma praeputiiの成分の1つをなしている.包皮垢の主な成分はたがいに向きあった皮膚面から脂肪化して脱落した上皮細胞からできている.それより前方になると亀頭の表面には腺がなくなる.皮膚には弱いしわがあって,また敏感な多数の乳頭が存在する.

 陰茎の皮下組織は疎であって,その付近の皮膚の皮下組織,および陰嚢の肉様膜とつづいている.その内方にはかなり固い結合組織の層,すなわち陰茎筋膜Fascia penisがある.これは陰茎の海綿体をみな包んでいて,それらを全体として1つに結合することにあずかっている.

 陰茎の皮膚の血管には浅層のものと深層のものとがあり,それに相当してリンパ管にも浅層のものと深層のものとが区別される.浅層のリンパ管は皮下陰茎背静脈とともに陰茎筋膜の外側を走り,深層のものは筋膜下陰茎背静脈とともに筋膜の下を走っている.

b)尿道の海綿体部Pars cavernosa urethrae

 尿道の海綿体部は尿道のうちでよく発達した特別の海綿体,すなわち尿道海綿体Corpus cavernosum urethraeをその壁にもつ部分である.この部分の長さは12cmないし15cmである.

 尿道の後部は広くなっていて,ここは特に尿道膨大部Ampulla urethraeとよばれている.そこでは内面の全周が約1.75cmである.それより前方に続く部分は中間部Portio intermediaといい,亀頭のところまでほぼ同じ広さで,全周が1.6cmである(図322).横断面では内腔が横の方向の裂け目であるが,亀頭では垂直方向の裂け目のようになっている(図266, 330, 331).亀頭では尿道がふたたび著しく広くなり,舟状窩Fossa navicularis urethraeという舟形のへこみを作っている.これは外尿道口のすぐ後方で尿道が広がったところで,その長さは2cmである(図267).外尿道口ではふたたび狭くなっており,ここはひろげにくいところである.外尿道口は縦の方向にのびる2枚の唇で境されている.

 粘膜は引き伸ばされないときには大小多数の縦走するひだをもっている.このひだは粘膜が引き伸ばされると消失するのである.そのほかに尿道凹窩Lacunae urethralesというくぼみが特に尿道の上壁に沿って舟状窩より後方にある.その開口は弁状の膜に被われて,しかも前方に向かっている.この構造ヒダStrukturfaltenは変化に富むものであるが,その1つでかなり大きいものがたいてい舟状窩の後方にあって,上壁から弁のようにぶら下っている.これを舟状窩ヒダPlica fossae navicularisという.

 粘膜の上皮は重層円柱上皮である(図323).舟状窩のところからは重層扁平上皮となる.粘膜の結合組織の部分には弾性線維が豊富にあって,舟状窩にはよく発達した乳頭が多数にある.粘膜にはさらに経過の全体にわたって分枝した管状腺,すなわち尿道傍腺Glandulae paraurethralesが散在している.その終末部は海綿組織のなかにまでかなり遠く伸びていて,この組織に包まれている.また尿道の隔膜部では内方の縦走筋と外方の輪走筋層とがよく発達しているが,海綿体部では両層とも次第になくなってゆく.

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最終更新日13/02/03

 

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